2022年後半、対面型の講演などが可能に。同時にグローバル公共財とも言える平和などの重要性を意識した。

2022年の最後半、対面型の仕事ができた。嬉しいことだが、同時にこういった活動ができるグローバルな基盤を意識した年だった。

2022年12月31日 高松 平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


研修プログラム「インターローカルスクール」に参加してくださった方と散歩しながら議論。大人のゼミ合宿のような時間だ(写真=熊倉次郎)

コロナ前から私が住む町で、集中講義と散歩をしながら議論を交わす研修プログラム「インターローカルスクール」を開催していた。10人以下のグループが対象で、これまで行政、NPO、研究者など多士済々が参加してくださった。

私の集中講義でインプットしていただき、皆で議論を展開させる。「研修プログラム」としているが、実際の雰囲気としては「大人のゼミ合宿」だ。

触発されたことを元に意見を述べ、その意見にまた別のアイデアを重ねる。さらに各自の整理、批判、洞察といったことを参加者同士が分かち合う。日本の日常から離れ、時間の流れ方そのものが異なるドイツに滞在するからこそ持てる、贅沢な時間だと思う。

この秋は、2グループが来られ、NPOなどの市民活動に焦点を合わせた「都市の発展」(集中講義の内容を最後に記しておく)、「スポーツと地域」といったテーマで行った。

茨城県行方市での講演。

また、私自身も日本へ飛び、茨城県行方市(なめがた)で講演をする機会もあった。この2年、講演はもっぱらオンラインだっただけに、講演前後で生じる現地の人々と行うスモールトークは格別。現地の空間を体感することも刺激的だ。

とはいえ、コロナはまだまだ問題がある。また日独の行き来はできるとはいえ、ウクライナ戦争で航空事情にも影響が出ている。

健康のための基本条件としての公衆衛生や環境問題(自然・気候)、平和、それに安定した金融事情などはグローバルな「公共財」だ。こうしたものがあってこそ、さまざまな活動ができるというものである。こういうことを改めて確認させられた年であった。(了)


2022年に行った研修プログラム「インターローカルスクール」の集中講義の一例このプログラムは活発な議論を通して「勉強しました」ではなく「いっぱい問いを立てました」と言うのが目標。なお、視察や調査の手伝いの類は私の仕事ではないので行っていない。

テーマ「地方都市の発展」

非営利組織と愛郷心に焦点を合わせた。

第1部 ドイツの地方都市について
1.1. ドイツという国の全体像
1.2. 連邦制と補完性の原理
1.3. 自治の力 と クオリティ・ループ
第2部 地域プレイヤーと都市
2.1. 地域プレイヤーとその特徴
2.2. 企業から見た地域プレイヤーとの関係
2.3. 非営利組織について
2.3. エアランゲン市におけるフェライン
第3部 都市との精神距離を近づける愛郷心
3.1. ハイマートとは何か?
3.2. 「積極的なハイマート」がカギ
第4部 地方都市は何を求めているのか?
4.1. なんでもある都市
4.2. 個人・社会・デモクラシー
4.3. 都市発展の原理
第5部 余暇の社会創造性
5.1. 近代社会としての余暇


著書紹介(詳しくはこちら
集中講義では本書の内容をさらに深堀りします


執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら