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高松:まず車がびゅんびゅん走るところにはおけない。物理的に危険です。それから犯罪率が高い町だと本を盗んで売り飛ばすような人が出てくるかもしれない。

井澤:確かにそうですね。

高松:そして、ここでは一種の「交換」が起こっているという理解ができると思うんです。誰が自由に本を入れてもいい。そして持って帰っても良いし、また戻しても良い。

井澤:「交換」を言い換えると、「シェアリング」です。それが公共空間の中でなりたっているのは市民主義ともいえるものが高いレベルにある。それで思い出すのが常滑市の「とこなめ招き猫通り」(写真下)です。

写真:井澤知旦さん提供


高松:どういう通りでしょうか?

井澤:同市は焼き物で知られていますが、現地39名の陶芸作家さんによる招き猫作品が普通の道のコンクリートの壁に埋め込まれている。

高松:楽しそうですね。

井澤:作られて15年ぐらいたっていますが、多くの市民や観光客が行き来するにもかかわらず、ほとんど壊されることなく、今日に至っています。人々に愛されています。これは信頼性の高い公共空間といえるわけで、自治体が自慢してもよい。

高松:ライブラリーにしても、パブリックアートにしても、成り立つか、成り立たないかで公共空間の質を問うことになりますね。


まちに「ポケットライブラリー」を作ってみては?


研修プログラム「インターローカル スクール」では講義終了後、地元のビールを楽しむ。ここでも多くの議論が飛び交う。

高松:エアランゲンで、集中講義と町を歩きながら議論をする「インターローカル スクール」という少人数制の研修プログラムを不定期で主宰しています。まあ、大人のゼミ合宿のような感じですね。それで、オープンライブラリーのあたりも歩くのですが、関心持つ方が多い。参加者のお一人に大学教員の方がおられて、後日、大学で実験的に作ってみたそうです。

 井澤:なるほど大学に作っても面白いですね。一方、私が勤務している名古屋学院大学の近くにイオンモールがあります。そういうところにもつくるのも良いかなと思う。イオンモールそのものが評価される場所になるかもしれない。

 高松:商業施設以上の価値を創出できそうです。他方、大学にお邪魔したときに思ったのですが、最寄りの地下鉄駅から出たところにオープンライブラリーがあってもいいなあと。

 井澤:なるほど。

 高松:5m四方程度の広さでよいと思うのですが、木があって、本棚置いてあってベンチをおく。ちょっとしたポケットポケットガーデンみたいな感じのものをつくる。

 井澤:ガーデンじゃなくて、ポケットライブラリーにしましょう(笑)。

 高松:はい(笑)。そういうポケットライブラリーがいくつかあると、かなり雰囲気が変わってくるように思います。

 井澤:そうですね。この町すごいねってなりそうです。第2回につづく


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車から人へ、都市の交通も変化する必要がある。
第2回「自転車道はどうつくる?」に続きます。

4回シリーズ 長電話対談 井澤知旦×高松平藏
■公共空間の使い方で都市の質が決まる
▶第1回 ドイツの市街地に本棚、その意味は?
第2回 自転車道はどうつくる?
第3回 オープンカフェが成り立つ基本的な条件とは?
第4回 「滞在の質」という観点から考えよう
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