自転車道はどうつくる?
長電話対談
井澤知旦(名古屋学院大学教授)
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高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
「公共空間」とは何か。都市計画などが専門の井澤知旦さん(名古屋学院大学教授)と、名古屋、ドイツ・エアランゲンをはじめとする、様々な都市を見ながら対談を行った。第2回目は自転車道がテーマ。クルマ中心の時代は過去のもの、自転車は現在の価値にあっている。さてどのようにすれば最適な自転車道を作れるのか?それから、最後に自転車道に関する動画も用意しています。ぜひご覧ください。(対談日 2020年8月12日)
※対談当時の状況をもとにすすめています。
4回シリーズ 長電話対談 井澤知旦×高松平藏
■公共空間の使い方で都市の質が決まる■
第1回 ドイツの市街地に本棚、その意味は?
▶第2回 自転車道はどうつくる?
第3回 オープンカフェが成り立つ基本的な条件とは?
第4回 「滞在の質」という観点から考えよう
目次ページ
通勤状況の日独比較
高松:コロナ禍で出てきた問題のひとつが通勤です。名古屋の状況は?
井澤:県外からが多く、岐阜、三重は通勤圏です。
高松:距離にしてどのぐらいですか?
井澤:50キロぐらいまで広がるでしょうね。ドイツの状況はいかがですか?
高松:自宅勤務という人が増え、全般的な通勤じたい減少。通勤する人に関していえば、感染をおそれて公共交通を使う人が減ったようです。
井澤知旦(いざわ ともかず)
名古屋学院大学教授。名古屋工業大学大学院工学研究科(建築学)終了後、民間シンクタンクを経て1990年に(株)都市研究所スペーシアを設立。地域活性化や都市再生、農業・観光振興等の東海地方のまちづくりを支援している。名古屋学院大学は2012年から。大阪市出身、1952年生まれ。博士(工学)。
井澤:名古屋でしたら、時差通勤が出てくる可能性があります。名古屋は鉄道網が充実している。そういうなかで密を避けるために時差通勤が増える可能性がありますね。一方、ドイツは職住がわりと近いですよね。
高松:はい。日本から見ると短時間通勤で羨ましく見えることがありますが、実はコロナ前から通勤はドイツでも問題になっていました。
ドイツの地域でおこっていた通勤問題の背景
高松:私が住むエアランゲンの周辺を例にあげると、通勤の状況が変わってきていました。昔はそれこそ「自分の町で働く」という傾向が強かった。実際、エアランゲン市もそうですが、雇用吸収力が強く、統計的にいえば十分職場数がある。また隣接する町もけっこう経済的に強い。「小さな経済拠点」が固まっているかたちです。
高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。「地方都市の発展」がテーマ。著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
昨年は次の2冊を出版。「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)、「ドイツの学校には なぜ 『部活』 がないのか」(2020年11月)。前者はスポーツ・健康の観点からみた都市計画や地域経済、行政・NPOの協力体制について。後者はドイツの日常的なコミュニティ「スポーツクラブ」が都市社会にどのように影響しているかについて書いている。1969年生まれ。プロフィール詳細はこちら。
井澤:エアランゲン市はシーメンスがあるし、隣接するヘルツォーゲンアウラッハ市は人口2万人余りの町ですが、アディダスやプーマが本社を構えていますね。
高松:はい。しかし、個々人が「自分に合う職場」を求めているうちに隣の町へ行くことになったのでしょうね。それで結果的にエアランゲンを見ると、出て行く人、入って来る人のプラスマイナスで昼間の人口が多い。一種の「雇用のミスマッチ」だと思います。
井澤:10万人規模の都市の昼夜人口で、昼間が多いというのは、日本でもなかなかないです。
高松:そうですね。それにしても、隣接する都市間の自動車のトラフィックが増加。コロナ禍の前、これが問題になっていました。もっとも、隣の町へ行くといっても、30分以内の距離なので、自転車で行く人もけっこういますが。
自動車道事情
高松:名古屋は自動車道が広いことで知られています。
井澤:そうですね。戦災復興事業で実質110メートル道路が南北1.74km、東西4.12kmが整備されています。しかし時代によって、自動車から人間の道というふうに、使い方を変えていく余地がある。ドイツというか欧州は早くから自転車道に着目されていた。最近は再び議論が盛んになっています。
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