ドイツには全国で約9万のスポーツクラブがあり、市民のスポーツ拠点になっている。しかしコロナ危機で、全ての試合・イベントはもとより、普段の活動も停止になっている。

2020年4月3日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)

■38,000人のスポーツ拠点閉鎖

スポーツクラブは、今日の日本の感覚でいうとNPOのような組織だ。その数は約9万。歴史も長く、老若男女がメンバーだ。日本の「学校内のクラブ」と対比させるならば、「社会全体の同好会」のような一面がある。ちなみにドイツの学校には日本のような部活はない。それだけにスポーツクラブは市民の健康・余暇・スポーツのインフラのような存在なのだ。筆者が生活するエアランゲン市(人口約11万人)にも約100のクラブがある。

このエアランゲン市での様子を書く。
コロナ蔓延で、3月14日の時点ですべての活動を停止決定したのが、エアランゲン市内最大のスポーツクラブ。サッカーから器械体操、トライアスロン、空手など多種目を扱う。3月16日からは、ドイツ全体でスポーツ施設すべて閉鎖( 4月19日まで)。同市の場合、約100のクラブにメンバーが38,000人程度いる。 彼らのスポーツ拠点が一気に止まってしまったかたちだ。

一方、買い物などのほか、単独・家族との散歩やジョギングは許可されている。筆者が住む町に限っていえば、緑地帯や遊歩道、それに森が最後の「健康・余暇・運動空間」になっている。都市計画の面目躍如だ。

(参考: コロナと健康インフラとしての森   コロナ危機とドイツの都市の森

学校に「部活」のないドイツは、子供から高齢者までスポーツクラブでスポーツをすることが主流。

■買い物代行に、エクササイズ動画

スポーツクラブは「社会全体の同好会」であるが、同時に「社会的組織」でもある。社会の危機には「スポーツでできることをやろう」という発想が出てくる。難民がどっとやってきたときも、体育館を一時的な避難所に貸し出しを申し出たり、難民のためのスポーツプログラムを作っている。

そして、コロナ危機対策の外出制限でも、たくさんの活動が出てきた。とりわけ次の2つが多い。
まずは、家庭内でできるエクササイズ動画。トレーナーとして活躍している人がメンバー限定でURLを送るケースもあるし、一般公開しているケースもある。外出制限下ではメンタル・フィジカル両方の健康維持が大きな課題だ。(冒頭写真は、自宅で子供たちと、フィットネスビデオを作成したトレーナーの活動を報じるエアランゲンの地元紙の記事 2020年4月2日付)

次によく行われたのが買い物の代行。
高齢者や基礎疾患のある人は感染後の重篤化・死亡のリスクが高い。クラブのある地域に住む、そういう人のために食料などの買い物をする取り組みだ。エアランゲン市内でも、スポーツクラブのサッカーチームの若者たちが、買い物代行アクションを立ち上げた。社会のなかで困っている人に対する「連帯」である。ちなみに、連帯は個人主義のドイツにおける「団結原理」で、とても重要だ。

参考:
日本に欠如している団結原理
ドイツのコロナ対応で強調される「連帯」の意味 (東洋経済ONLINE)

■経済的問題も発生

新刊「ドイツのスポーツ都市」(2020年3月出版)
日常の地域社会でどのような活動があり、その意義、背景について言及している。

コロナ危機は経済活動を停滞させる。それはスポーツクラブも例外ではない。クラブ運営に様々なランニングコストがかかり、財政を圧迫する。

3月後半、スポーツクラブの損害をどの程度あるのかというデータ収集を各州で開始。バイエルン州では約2億ユーロ以上の損害が出ていると推定されている。各州のスポーツクラブ連盟、ドイツオリンピックスポーツ連盟らは、連邦政府・州政府にスポーツクラブ堅持のための行動を呼びかけている。

一方で、スポーツクラブは「愛情を込めてアマチュアとしてスポーツを行う同好の士のコミュニティ」(デトレフ・クールマン教授 スポーツ教育学)というふうに、クラブの「原理」を再確認する意見も出ている。 危機のときほど、組織や集団がおく原理を確認し、そこから対策をたてることは大切だ。

「スポーツクラブは(客が一方的に商品を買う)スーパーマーケットとは違う。 クラブメンバーがなんらかの貢献をすることができる。これによってクラブはさらに強くなるだろう 」と同教授は述べている。(了)

 執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。 最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)
一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら

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