コロナウィルスが猛威を振るう中、感染していない人は心身の健康を保つことが大切だ。筆者が住む町は森が多いが、運動のためのインフラになっている。

2020年3月15日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)

■ スポーツクラブも活動停止

ドイツでコロナウィルスの影響が強く出ている。
私が住むエアランゲン市は3月13日、学校、幼稚園、文化施設などの閉鎖を発表。市民スポーツの中心的存在であるスポーツクラブ(NPOのような組織)が100程度あるが、日常のトレーニング等の活動を休止するクラブもでてきた。

こんな状況下、人々は手洗い、社会的接触の最小限化、握手をしないといった対策が求められる。 そして、食事・睡眠、そして適度な運動などで健康を保つことが大切だ。
余談だが、健康な人のマスク使用は推奨されていない。(参考: 欧州で人々はなぜマスクをしないのか考えた )

ところで15日、日曜日は朝から晴天。私は拙宅近くの森を軽く8キロほど走った。この森は私の「ジョギングコース」になっているのだ。

■森はいつもどおり、にぎやかだった

コロナウィルスがイタリアに上陸して以来、ドイツにやってくるのも時間の問題という観測があった。その予想通り、感染増加。それに伴い社会に少しづつ制限がかかる。 まるで「爆弾の落ちてこない戦争」がおきたかのようだ。そんな中、森はどうなっているのかという好奇心もあった。

しかし、森ではジョギングをする人、ノルディックウォーキング、犬を連れての散歩など、老若男女が出てきていた。いつもの風景である。

もちろん、人が多いといっても、満員電車のように混んでいるわけではなく、接触することもない。しかしすれ違う人とは、知らない人同士でも「おはよう」と言葉を交わしたり、アイコンタクトを送り合うこともある。実に気持ちのよい時間だ。

私の「森ジョグコース」には、こんな水たまりもある。森に行く途中 の遊歩道では小さな子供がお父さんと自転車を乗る練習をしている風景にも出くわした。 (2020年3月15日撮影)

■余暇・運動インフラは都市計画の仕事だ

ところで、ドイツの人々は、森に対して畏怖の感情を持つと同時に、森林資源を活用してきた歴史がある。そして森は余暇や運動の場でもある。だから、冬の寒い時期でも太陽が少し出ると、けっこう人が森に出てくる。

余暇や運動のための取り組みは「都市の質」を高めることになる。(書影をクリックすると、アマゾンのページにうつります)

エアランゲンの場合、町の周辺を森が囲むような位置関係なので、どこに住んでいても森にアクセスしやすい。さらに遊歩道や緑地帯も多い。また公園が充実するような法律もあり、誰でも余暇を過ごしたり、ジョギングなどの運動ができる。

これは都市計画の領分で、都市における生活の質を高めるかたちだ。このあたりは拙著ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方でも言及している。

冒頭でも述べたように、コロナウィルスでスポーツクラブのトレーニングも休止。さらに、この原稿を書いている間に18日からバイエルン州は日用の必需品を扱う店以外は閉めることを決定した。そんな時こそ、感染していない人にとって、心身の健康を保つことが大切だ。余暇・運動のインフラの充実度が問われる。

あなたの住む町ではどうだろうか?(了)

▼一週間後の森のジョギングレポート▼
【2020年3月22日】コロナ危機とドイツの都市の森

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら