拙著「ドイツのスポーツ都市:健康に暮らせるまちのつくり方」に対して、川中大輔さん(龍谷大学講師)が、本文を引用しつつSNSでコメントを公開してくださった。同氏の許可を得てここに紹介したい。

2020年4月3日 コメント: 川中大輔 (龍谷大学講師)

川中大輔さん

「ドイツのスポーツクラブは、『スポーツを共に行う仲間であること』を文化として大切にしているが、さらには子供や青少年に対するデモクラシー教育の場としても位置づけられている。子供や若者が平等な関係のもと、人の意見に耳を傾け,自由に発言するという振る舞いを学ぶ場にもなっているのだ。

もっとも,ドイツの社会全体にこういう考え方があるので、スポーツクラブに限った話ではないが、上下関係が際立つ日本のスポーツ文化と比べると,スポーツクラブは『平等な人間関係をもとにしたデモクラシー教育の場』になっていることがわかる。」(高松平藏,2020,『ドイツのスポーツ都市』学芸出版社,p.42)

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高松さんには昨年(2019年)、龍谷大学瀬田学舎で開催された日本NPO学会第21回年次大会の基調講演をお願いいたしました。

その際も、市民社会におけるスポーツ・文化活動が持つ意味をお示しいただきましたが、本書でその理解を深めていくことができます。具体的な社会問題の解決に取り組む市民活動に対して、一見すると「趣味的」と思われる市民活動は劣位に置かれることが少なくありませんが、果たしてそれでよいのかと考える機会にもなるでしょう。

日本のスポーツ文化への問題提起も含まれていることから、NPO関係者はもちろん、部活動に熱心な先生方にも読んでもらいたい一冊です。

「ドイツでは、なぜ地方都市に経済力があるのか。なぜ中心市街地が賑わっているのか。なぜ生活の質が高いのか。そのメカニズムの中心にあるのが、『市民の自発的な活動』である。ボランティアや社会・政治運動など様々な自発的な活動を支えているのが『フェライン』と呼ばれる非営利法人(NPO)だ。このフェラインもまた、日本とは桁違いの規模と長い歴史があるのだが、とりわけスポーツに関するフェラインが多い。…この数の多さがドイツのスポーツに関心を持った理由であり、本書執筆の出発点である。」(前掲書,pp.5-6.)

川中大輔 (かわなか だいすけ)
龍谷大学社会学部現代福祉学科専任教員。市民教育や協働まちづくり、NPOマネジメント関係の実践的な活動歴も長く、様々な団体等での公職につく。1980年、神戸生まれ。関西学院大学社会学部卒、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科修士課程修了。