
近年、日本のメディアや議論空間に触れていて、「わかった気にはなるが、何も前に進まない」という感覚を覚えることが増えている。2026年に向け、ジャーナリストとしてドイツの地方都市から見た日本や世界の構造を読み解き、公共知を駆動させるための知見を送る。表層的な「学び」「気づき」といった「わかりやすさ」だけでは、公共知は回らない。
2026年1月1日 文・高松 平藏 (ドイツ在住ジャーナリスト)
ドイツの地方から見た世界と日本
2025年はドイツでも日本でも選挙があり、外国人問題や経済低迷といった共通の課題が目立った。しかし「同じように見える問題」も、その背景や構造はかなり異なる。私はドイツの地方の現実、地方都市からの視点を活かして執筆・講演活動を行なった。ドイツをある種の鏡として使い、日本の「常識」や「当たり前」を再考することを意図している。またAIが標準的な道具になる時代に入っており、技術・哲学・社会の関係性の中で妥当な使い方を模索しなければならない。
このような状況に対して、公共知(社会で共有され、議論や行動に活かされる知)を大きくすることが、民主主義を「生きたもの」にする。ジャーナリズムとは「権力の監視」だけではなく、議論を活発化させる問いを生むことも仕事である。議論の質は「問いの質」によって決まるのだ。未来社会の設計者たちの発想を刺激する記事を届けたいと考えている。
実践と都市観察――ジャーナリストの視点
昨年の活動も書き留めておきたい。
執筆・講演以外に、実践につながる仕事も始めた。ジャーナリストには「言語化」の能力が問われる。こうした職能を活かし、企業経営者やマネージャーを対象にした危機管理の基礎研修プログラムを、リスクマネジメントが専門の田邊朋子氏(RMI取締役研究所長)らと立ち上げた。リスクは個人ベースで感じると回避行動が自然に生じる。しかし組織では、「まずい」と思った感覚を言語化し、共有する必要がある。その能力を高めるプログラムである。(「リスクマネジメント ベーシック」Facebookページ)
ウェブメディアや専門誌への寄稿も続けた。2025年は社交ダンス専門誌「ダンスビュウ」で連載の機会をいただき、ドイツにおける社交ダンスを都市文化の観点で論じた。日本の競技偏重型との比較から大きく言えば、「スポーツと社会」の関係を検討する内容だ。
有山篤利さん(追手門学院大教授)と配信しているYouTube動画「ありへーのスポーツカフェ」も好評で、昨年9月に配信を始めて1年を迎えた。日本は現在、「スポーツの社会的再編」の時期である。日独の比較を通じ、スポーツ文化を掘り下げた内容をお送りしている。
個人的なことを加えると、犬を飼い始めた。社会性の高い動物であるため、私にとっては新しい「都市観察のメガネ」だ。この視点を活かした論考も当サイトで書いている。(下記にリストあり)
2026年も、表層的な「学び」「気づき」といったわかりやすさに甘んじることなく、「構造」「背景」により踏み込むことで、公共知の厚みにつながるジャーナリズムを展開していきたい。(了)
※インターローカルジャーナルのFacebookページはこちら。ぜひチェックしてみてください。
2025年のインターローカルジャーナル執筆分
便宜的に「ドイツから見た日本」「都市と地域社会のデザイン」「民主主義と社会哲学」「スポーツ・文化社会論」「都市と犬」「国際社会と未来思考」に分類した
ドイツから見た日本
ドイツの文脈を鏡として日本社会や文化を読み解く比較文化・社会分析。(9本)
- ドイツから見た21世紀の日本語:地方の発展を考えるなら、「課題解決」と言ってはいけない
- ドイツから見た21世紀の日本語:「百条委員会」
- ドイツから読む日本のオーバーツーリズム
- 「日本人ファースト」とドイツ極右の「外国人流入過剰」はどう違う?
- 工場は経営者の“身体”、日本の美意識型製造業の強さと限界
- ネーミングににじむ、「日本はどのぐらい近代国家なのか?」という疑問
- 「体幹」が見当たらない体育会系国家、ニッポン
- 石破演説から導き出せる、近代国家としての日本の課題
- 思考の射程と、日本社会の弱点
民主主義と社会哲学
教育・思想・社会の構造的変化を扱う理論的論考。(8本)
- ファクトチェックよりも大切な情報哲学教育
- “中立”という迷路から抜け出せるか?民主主義教育の未来
- 民主主義の危機 2025、「自由市場経済の三銃士」と「価値観の市民戦争」
- ドイツの地方紙が、子供向けに伝える民主主義の価値
- 個人や組織のレベルを超えた「問いの質」という課題
- 「問い」と「議論」には深い関係がある
- 崩れつつある技術・哲学・社会の均衡
- コロナパンデミック発生から5年、ドイツ・バイエルン州の教訓と準備
都市と犬
都市社会における犬の文化的・社会的意味を探るシリーズ。(7本)
都市と地域社会のデザイン
都市計画、地方活性、社会的デザインをめぐる実践的考察。(11本)
- 安心は誰が作る? クリスマス市場に見る「社会的デバイス」としての都市
- 改革は地方から始まる、というドイツの法則!?
- 公共交通機関がすべて無料! ルクセンブルクは未来都市のモデルとなるか?
- ドイツ、地方分散型の経済拠点の構造的問題
- ドイツ、地方の観光客回帰の陰に潜むオーバーツーリズムの影
- 都市を支える真の力とは?ドイツ消防団と企業の協働モデル
- 「ガーデンシティ」という欧州思想と、日本の「田園都市」比較考
- 地方を元気にしていくための基本概念「ストック・シェアリング」
- 五輪と都市の必然、ミュンヘンがウォーカブルシティを作った理由
- ドイツの「ウォーカブル」の本質:選挙前の都市中心部は「投票」以上の民主主義の価値がある
- アルプスの悪魔、都市へ降りる――クランプスから読む「伝統」の越境
スポーツ・文化社会論
スポーツや文化を通じた社会関係や価値観の形成を考察。(6本)
- 恋愛の発生装置としてのスポーツクラブ
- 名サッカー選手の「お墓」から見える、チームへの地元愛が生まれる仕組み
- ニュルンベルクで地元のサッカーレジェンドのミュージカル制作中
- 【ドイツ・サッカー】ブンデスリーガは地域社会にとってどんな存在か?
- 「ありへーのスポーツカフェ」1周年――ドイツと日本、二つの視点で掘り下げるYouTube発スポーツ文化
- 私の「大谷学校」——1990年代の関西ダンスシーン
国際社会と未来思考
世界的な構造変化や科学技術、国際政治をめぐる展望的分析。(6本)

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」「ドイツの都市はなぜクリエイティブなのか」など。当サイトの運営者。プロフィール詳細はこちら
