新刊「スポーツを地域のエンジンにする作戦会議」を紹介する

この度、晃洋書房から新刊発売。追手門学院大学教授・有山篤利さんとの共著である。同氏とは2011年からスポーツについて議論を重ねてきた。部活の地域移行が課題になる以前からの話である。また何度か2人で登壇することもあった。(本サイトでもたびたび登場していただいた)

議論の内容は日本スポーツの違和感をあぶり出し、ドイツでなぜスポーツは社会の一部であり、そして社会を作るエンジンになっているのかということだった。

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そんな議論をしつつ、有山さんは、元々専門であった柔道を題材に「『わざ』を忘れた日本柔道」(2023年3月)を著された。いうまでもなく柔道は東洋のエスニックな身体文化であったが、グローバル化している故に、却って「日本のスポーツ文化」としての特徴が浮かび上がると言えるだろう。

私(高松)はといえば「ドイツのスポーツ都市」「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのか」という著書を2020年に出した。

そして、そんな2人の議論や執筆活動の成果が今回の「スポーツを地域のエンジンにする作戦会議―ドイツの現状、日本の背景を深堀り!」(晃洋書房)である。

「部活の地域移行」とは日本のスポーツ環境の再編を意味するが、ドイツのことを「輸入」しても劣化コピーにしかならない。しかし日本の問題の背景を知り、そしてドイツの現状や発想を知ることで、再編のためにどんな議論をすべきかというヒントになるだろう。目次を以下に記しておく。(了)


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第Ⅰ部 どうする日本のスポーツ問題

第1章 新型コロナが問いかける日本型スポーツ
 1 スポーツが消えた?―コロナ禍からの問いかけ―
 2 競技大会に出場することがスポーツ活動なのか
 3 托卵型育成モデルの日本型スポーツ
第2章 こうしてできあがった日本型スポーツ
 1 日本のスポーツは最初から部活だった
 2 日本型スポーツの誕生
 3 高度経済成長と日本のスポーツ
 4 AKB48にみるパラダイムシフト
 5 プロダクトのスポーツからプロセスのスポーツへ
第3章 どうするブラック部活動
 1 ブラック部活動の出現
 2 運動部活動の改革が働き方改革でよいのか
 3 運動部の危機と日本のスポーツ
 4 スポーツ活動に関するかみ合わない議論
第4章 どうする部活動教育
 1 スポーツはオンの活動? オフの活動?
 2 運動部活動って何するところ?
 3 運動部活動という教育の落とし穴
 4 運動部活動の地域移行の是非
第5章 どうする運動部活動の地域移行
 1 スポーツは習い事?
 2 競技スポーツ環境のスクラップ&ビルド
 3 スポーツという主体的な余暇の過ごし方を学ぶ
 4 運動部活動が地域社会を創る
 5 保護者というアクター
第6章 運動部活動から日本のスポーツを改革する
 1 改革のゴールイメージを描く
 2 運動部活動の改革に向けて

第Ⅱ部 ドイツで「スポーツが地域社会のエンジン」になっている理由

第7章 こんなに「スポーツ」があるドイツの地域社会
 1 スポーツクラブと学校が施設を共用
 2 都市には「スポーツ環境」が埋め込まれている
 3 プログラムが地域スポーツを生きたものにする
 4 地域のスポーツ資源を使い倒すドイツ
第8章 スポーツクラブは実に「社会的組織」だった
 1 似て非なるもの、スポーツクラブと草野球
 2 スポーツは「習い事」ではない
第9章 何を隠そう、余暇には社会創造の力がある
 1 やっぱり日本は働きすぎ
 2 「余暇」は余った暇な時間ではない
第10章 だからスポーツが「社会」や「デモクラシー」とつながっている
 1 人間の尊厳とスポーツがなぜ関係しているのか?
 2 生きたデモクラシーにこだわるドイツ
第11章 ドイツ視点で、どう見える? 日本の社会・デモクラシー・スポーツ
 1 そもそも日本には「社会」がない⁉
 2 日本の民主主義はデモクラシーというよりエアクラシーだ
第12章 地域社会の一部で、地域社会を作るエンジンとしてのスポーツ

第Ⅲ部 日本のスポーツを21世紀にふさわしいものにする作戦会議

 1 有山篤利が高松平藏にドイツの事情についてきく!
 2 高松平藏が有山篤利に日本の事情についてきく!


著書紹介(詳しくはこちら
ドイツの「スポーツクラブ文化」について、たっぷり書きました。

都市の魅力を高めるスポーツ
スポーツは地域のコミュニティを作る

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。また講演や原稿依頼等はこちらを御覧ください。