
「出会いはいつも意外な場所にある」というのはよく聞く話だが、その場がスポーツクラブだったらどうだろう? オランダの研究によれば、スポーツクラブは恋愛の発生装置として機能しているという。
2025年11月19日 文・高松 平藏 (ドイツ在住ジャーナリスト)
スポーツクラブと恋愛のリアル
オランダのミュリアー研究所による調査※では、スポーツクラブの会員は21%もの割合で、現在のパートナーと出会っている。
つまりスポーツクラブは、重要なソーシャルプラットフォームとして機能している。男女が同じフロアで一緒に汗をかく、その身体的な物理的近さや、共通の体験は、否応なく精神的距離を縮める。バドミントンなど、男女混合でプレーするスポーツほど、ワンナイトスタンドも含む恋愛が発生しやすい。
調査でも述べているように、スポーツクラブは、会員の年齢層や住む地域、社会経済的背景が似通う傾向が強く、そこに自然な「事前選別」が働いている。共通の環境や同世代が集うことで、成功する恋愛関係が成立しやすい素地が形成されている。こうしてみると「出会い系アプリ」よりも堅実な恋愛装置だ。
ドイツのスポーツクラブは「コミュニティ」だ
ここで重要なのは、スポーツクラブとはどのような人間集団か、という点だ。日本の体育会系というスポーツ文化では「勝利至上主義」や「ヒエラルキー」が強調される。それに対して、ドイツのスポーツクラブは競技としてはもちろん熱い試合もあるが、それが中心的な目的ではない。健康づくり、余暇の充実、何より仲間との繋がりのための「コミュニティ」なのである。
通常、人間の集団には光と影がある。ひどい場合は「いじめ」も発生するが、「友情」も育まれる。そして、道徳的な是非は別に、「不倫」も含む「ロマンス」が当然出てくる。「学校のクラス」「職場」でさまざまな人間関係ができることと基本的に同じだ。
実際、筆者もスポーツクラブでカップルができる様子を目の当たりにしたことがある。また結婚に至り、そのカップルの式に参加したケースも複数ある。
なおスポーツクラブのコミュニティの力について、ドイツでは恋愛・結婚よりも、外国系市民やハンディキャップを持った人たちとの共生の装置として論じられることが多い。(了)
参考文献
※Sam van Raalte (2017). Warum Sportvereine das bessere Tinder sind. VICE
https://www.vice.com/de/article/warum-sportvereine-das-bessere-tinder-sind-271/
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「スポーツクラブ文化」について、たっぷり書きました。

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」「ドイツの都市はなぜクリエイティブなのか」など。当サイトの運営者。プロフィール詳細はこちら


