拙著に登場してもらった70代の男性に本をようやく手渡せた。

2022年6月7日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


この日もアラントさんは筋力トレーニングをしていた。

「こりゃ日本語勉強しなきゃ、読めねえな」と笑うのはヴェルナー・アラントさん。

私は2020年にスポーツに関する本を2冊出版した。拙著でアラントさんに登場してもらったことから、贈呈したのだった。コロナでなかなか会う機会を作れず、先週6月2日にようやく手渡すことができた。

1944年生まれの同氏は60年以上にわたり、地元のスポーツクラブのメンバーである。

ドイツのスポーツ文化を作り上げているのは「スポーツクラブ」だが、19世紀からの歴史があり、クラブの数もドイツ全国に9万以上ある。

したがって日本から見ると、スポーツクラブの理解はちょっと難しい。その「スポーツクラブ文化」の一端をアラントさん人生から、少しでも伝えることができればと、拙著に登場してもらったのだ。

詳しくは拙著をご覧いただければと思うが、氏の人生は学校や仕事の傍らにクラブが伴走し、人生の各ステージにあった「スポーツ」をしている。日本でいう「生涯スポーツ」「地域スポーツ」とはどのようなものかを体現しているかのような「クラブ物語」がそこにある。(「ドイツのスポーツ都市」19ページ)

「クラブにはとても満足しているよ。そうでなければ、こんなに長くメンバーでいるわけがない」(アラントさん)。「ドイツのスポーツ都市 健康にくらせるまちのつくり方」(学芸出版)では同氏の「クラブ物語」を紹介している。


もっとも、今日は進学や仕事で、他地域へ引っ越すことが増え、若い頃からずっと同じクラブに所属し続けるケースは少ない。

それでも引っ越した先のクラブのメンバーになり、そのまま何年もメンバーになっている人も少なくない。

都市の発展をテーマにしている私から見ると、このような個人とクラブの関係があることから、ドイツのスポーツは(地域)社会の一部であり、同時に(地域)社会のエンジンになっているのだと思う。

さて、アラントさんに手渡したこの日も元気にトレーニングをしていた。16歳にメンバーとなり、今年で76歳である。(了)


著書紹介(詳しくはこちら
スポーツは社会の一部であり、同時に社会のエンジンでもある

アラントさんの物語が読めます
スポーツがどんな「社会」を作るのか?

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。また講演や原稿依頼等はこちらを御覧ください。