コロナにまつわる、77人の論考のアーカイブという意義がある。

「日本と世界の課題: ウィズ・ポストコロナの地平を拓く」という書籍が今年の6月に出版された。NIRA総合研究開発機構による編集で、私も短い拙文を書かせていただいた。

2022年6月16日 高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


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書籍内容については、表紙に書かれたものを下記にコピーしておく。

感染症との闘いが長期化する中、
柔軟で強固な社会や国家をつくるにはどうすればよいのか。
未来をどう描くのか。
第一線で活躍する77人の識者が課題と展望を語る。


そして、この本じたいに、次のような価値があると思う。

(1)新型コロナ感染症にまつわる社会や国家の課題を提示

77人の寄稿者の論考から課題の分類が行われ、そのまま目次になっている(後半に記載)。編者の方たちが分類されたと思われるが、悩ましくも楽しい時間だったのではと推察する。

(2)論考のアーカイブ

言うまでもなく、コロナは歴史的できごとである。
パンデミックへの対応は医療、科学、政治をどのように組み合わせるかがカギだ。しかし決定的な対策がなかったために、組み合わせ方について各国の性質がはっきり出てくる。そんな状況下についての論考を残すという意味で意義深い。

特に、アーカイブの不備がよく指摘される日本で、過去のことを忘却の彼方へやってしまう傾向がある。それに対して、ドイツは逆にアーカイブやメモリアルの必要性を強く意識しており、自他認める「記憶の世界チャンピオン」だ。コロナの流行がおこると同時に、ミュージアムや自治体で、市民の体験や物語を収集する動きが散見されている。そこには集合的記憶としての歴史を編纂する意識が見いだせる。


本書による課題の分類(目次)

Chapter 1 ウィズ・ポストコロナを考えるにあたって
Chapter 2  感染対策-現場の対応、検証、教訓
Chapter 3 加速するデジタルトランスフォーメーション
Chapter 4 岐路にある社会保障
Chapter 5 民主主義とネットリテラシー
Chapter 6 人口の分散と地域活性化
Chapter 7 ビジネスモデルの再構築
Chapter 8 感染症とグローバルガバナンス
Chapter 9 米中のはざまで日本の果たすべき役割
Chapter 10 コロナ禍でのサステナビリティ

ちなみに拙文は Chapter 2 に。タイトルは「対策に見る国ごとの性質、検証すべきだ─例としての日独比較」。(了)


関連記事:コロナ禍でも「デモ参加は自由」なドイツの発想 積極的に民主主義の議論が行われているワケ
(東洋経済オンライン寄稿分)
関連リンク:NIRA総研メディアセミナー「ドイツの都市再生プログラム-日本へのヒント」(2019年6月5日開催 時間:約30分)
ミニ講演+同機構理事で東京大教授・宇野重規さんとの対談動画

高松平藏 著書紹介(詳しくはこちら
ドイツの自治体にはアーカイブがある


執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。また講演や原稿依頼等はこちらを御覧ください。