
2025年7月29日 文・高松 平藏 (ドイツ在住ジャーナリスト)
NIRA総合研究開発機構が発行した「日本と世界の課題2025―ルールなき時代にどう向き合うか」が2025年7月に出版された。本書は159名の識者が寄稿し、混迷を深める国際情勢の中、山積する内外の課題に対し世界と日本の未来を探る内容だ。
私は今回も寄稿機会をいただき光栄だが、それ以上に興味深いのが編集の方法だ。数多くの寄稿原稿が揃ってから分類・整理し、章立てにまとめられているのだ。いわば「KJ法※ 」編集と言ったところか。これにより現代の識者が何を重要課題と捉えているかが可視化されている。2025年版では各章のキーワードも掲載され、時代の特徴がより鮮明に浮き彫りになっている。
激動する国際秩序と民主主義の揺らぎ、気候変動や新しい価値の創造、教育と科学技術の革新、持続可能な社会制度の構築、そして人口減少への対応を含む多面的課題の集合体と言える。識者たちはこれらを通じて「共生」や「持続可能性」、「多様性」といった理念を重視し、未来に向けて柔軟で公正な制度設計を求めている。
私は民主主義における、責任ある情報発信ができるような教育の普及の必要性を述べた。例えばファクトチェックが「結果対策」ならば、「情報発信のための哲学教育」は「原因対策」だ。(了)
※KJ法(川喜田二郎氏によるカード分類法)は、多様な情報や意見をカードに書き出し、内容の類似性や関連性をもとにグループ化する手法である。この方法により、複雑な情報の構造や本質的な関係性を視覚化し、新たな洞察や理解を得やすくする。今回の書籍編集における章立てやキーワード整理は、まさにこのKJ法的なアプローチを活用し、寄稿者の多様な視点を体系的にまとめている。
「日本と世界の課題2025ールールなき時代にどう向き合うか」目次
ChapterⅠ 世界の分裂、日本はどう向き合うか――ルールなき時代の国際秩序の行方
ChapterⅡ 揺らぐ民主主義――選挙システムやメディアは、その機能を回復できるのか
ChapterⅢ 脱炭素から食料まで――気候危機の時代を生き抜く選択肢
ChapterⅣ 価値の再編成――分散・変化・挑戦の時代に企業は何を生み出すか
ChapterⅤ 「誰ひとり取り残さない」社会へ――教育が担う変革の力
ChapterⅥ 未来を共創する――科学とデジタルによる社会のリデザイン
ChapterⅦ 今を生きる責任、未来へつなぐ制度設計――財政・社会保障の持続可能性を問う
ChapterⅧ 人口減少社会をデザインする――新しい「地域の力」の創造へ
高松平藏 著書紹介(詳しくはこちら)

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」「ドイツの都市はなぜクリエイティブなのか」など。当サイトの運営者。プロフィール詳細はこちら