2023年2月2日 高松 平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)
拙著「ドイツのスポーツ都市」と「ドイツの学校にはなぜ『部活』がないのか」の2冊が筆者が住むエアランゲン市のアーカイブに収蔵された。
実はこれまでの拙著は全て収蔵されている。理由はただ一つ、エアランゲン市および周辺地域の出来事を具体例として取り上げているからだ。つまり、同市から見ると「日本語で書かれた町の本」と言うことになるのだ。
自治体のアーカイブとは古くからの文書、レコードやテープなどのメディア、絵図、パンフレット、出版物、といったものが収蔵されている施設である。ちなみに同市のアーカイブは収蔵物は棚6キロメートル分ある。
収蔵された2冊の拙著、詳しくはこちら。過去の著書も同市のアーカイブに収蔵されている。
しかし同市が特別というわけではない。
アーカイブの設置・運営は自治体の権利と同時に義務なのだ。それに対して、日本には市区町村立のものを含めて100程度しかない「アーカイブ後進国」との指摘もある。
日本の近代化で明治政府は欧米のシステムや概念をかなり輸入した。しかしアーカイブについては理解が及ばなかったり、明治政府の性質から過去を遡るということが行われなかったことなどが影響し、今日の「アーカイブ後進国」につながっているようだ。
ひるがえって自治体アーカイブは都市の歴史アイデンティティを保証する装置だ。日本でよくいわれるようになった「シビックプライド」という言葉があるが、「私たちの都市にはこういう歴史(=物語)がある」という確かなものがあってこそ、都市の特徴が明らかになる。
言い換えれば、アーカイブは自治体のインフラである。
厳しい言い方をすると、歴史の第一次資料をきちんと収集・保存・利用できるアーカイブがなくては「シビックプライド」など語れないはずなのだ。(了)
日本のアーカイブ事情についての参考:
倉山満. (2021). 救国のアーカイブ 公文書管理が日本を救う. ワニブックス.
執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら。また講演や原稿依頼等はこちらを御覧ください。