日本の「下から目線」接客文化に対して違和感がある。

2022年9月23日 高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


下から目線の接客


日本の家電量販店で、店員さんにちょっとしたことを調べてもらった。「こちらで少々お待ち下さい」と勧められ椅子に座る。ほどなくして戻ってきた店員さんは、丁寧に説明をしてくれた。

しかし、気になるのは彼が片膝をついて説明する姿である。これではまるで殿様への戦況報告だ。「む、わかった、レジへ参れ」と言ってしまった。(これはウソ)

こんなこともあった。
日本の航空会社の飛行機に乗った時に、ちょっとだけ「良いこと」をした。すると女性客室乗務員が、膝をついて「お客様、ありがとうございました」である。思わず「苦しゅうない」と言ってしまった。(これもウソ)

ともあれ支払い・説明など必要な接客行為以外の「装飾(態度や言葉遣い)」が「下から目線」なのである。


やや大袈裟だが、客の決断に敬意示すドイツの店員


ドイツでも「装飾」はある。

印象的だったのは宝石店。ちょっとした記念の指輪を妻に買った。2人でああだこうだと言いながら「これにします」とベテラン女性店員さんに伝えた。それほど高くもないものである。

だが、やや大袈裟に「素晴らしい(ビューティフルな)決断です」とかえってきた。「下から目線」というよりも、形式的ではあるが、決定に対する敬意の接客装飾(言葉)といったところか。


下から目線接客のマニュアルないが・・・


ひるがえって、個人的には下から目線接客が落ち着かない。冒頭の店員さんには「ポチじゃないんだから、こちらの椅子に座りませんか」とつい言ってしまった。(これはホント)

話を聞けば、片膝をつく「接客マニュアル」はない。しかし「下から目線」接客をやらないと、先輩や上司にたしなめられるらしい。「接客文化」として定着しているのである。

ところで「上から目線」に敏感な日本社会だが、それは「個人と個人として対等になろう」というよりも、「何かに従属している」ことが重要で、それをもとに上下を決める考え方が、今なお強いのかもしれない。というそのために「下から目線」の接客が成り立つのだろう。

一方、膝付き接客に対して、お客さんから違和感を表明する意見も「結構いただきます」(量販店店員さん)という。店側のやりすぎ、客への忖度のしすぎと見ることもできるだろう。(了)


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ドイツの地方都市はなぜ元気なのか?
ドイツのスポーツ都市

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら