新年早々、タイトルに「クリスマス」の文字を見て驚いた方も多いかもしれないが、キリスト教圏ではクリスマスシーズンがはっきりしていて長い。11月最後の日曜日がスタートだ。
(「月刊 信用金庫」2011年1月号掲載分に小見出しなどをつけて転載 数字は当時のもの)

2021年1月5日 文・高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)


ツリーは「養殖」されている


クリスマスといえばクリスマスツリーが必需品。日本の家庭では人工のツリーを飾るのが一般的だが、こちらでは本物のもみの木などの針葉樹が使われる。原稿を執筆している12月の時点で今年は2900万本の木が販売される見込みと報じている。

気になるのはこれだけのクリスマスツリーが毎年どのように流通しているかということだ。まずシーズンに入ると、クリスマスツリーを販売する露店が出る。この時期、ツリーを家に運ぶ人の姿をよく見掛ける。専用のスタンドも販売されており、売り場ではうまく立つように木の下を削ってくれる。

ここ5年、年々販売数は増加傾向にあり、また室内だけでなく、バルコニーやテラスなどにも置く人が増加。自宅に2本飾るというのがちょっとした流行りになっている。ある種類のモミの木の値段は2mで32- 42ユーロ。物価感覚でいえば3-4千円程度か。

クリスマスシーズンの仕事のひとつは、クリスマスツリーを買うこと。(高松平藏 撮影)


これらの木の70- 80%は国内産、残りはデンマークやアイルランドから輸入されているが、ドイツ国内をみると、森林の比率は約30%。日本の約67%に比べかなり少ないが人工林の面積はほぼ同じだ。

200年ほど前から森林管理をはじめたドイツは、木材産業の基盤が充実している。ドイツ森林所有者連盟によると、クリスマスツリーとして伐採される もみの木の3分の2はこのために植樹されたもの。つまり、畑作と同様に考えて良いだろう。残りの3分の1は森林管理で間伐された木を販売している。

そして各州政府は地元産のもみの木の購入を勧めている。地域の経済振興と輸送距離短縮による環境負荷の低下が見込めるからだ。ともあれ、ドイツにはこういった生産・流通があり、各家庭のクリスマスを盛り上げる。


ゴミ処理場というより、堆肥工場


さて日本からはちょっとピンとこないが、クリスマスツリーは1月6日まで飾られる。というのも、この日はキリストの誕生を聞き、東方の三博士の訪問と礼拝を記念した日だからだ。しかし、そんなツリーも7日の朝にはお役御免。ゴミとして外へ出される。筆者が住むエアランゲン市の場合、毎年その量は50トン程度にも及ぶ。

1月6日をすぎると、回収を待つクリスマスツリーが町のあちらこちらで見かける。(高松平藏 撮影)


この「ゴミ」は普段から市内の庭木ゴミが集められている「コンポストセンター」に回収される。庭をもつ家が多いからこそ成り立つセンターといえるかもしれない。

ここでは庭木ゴミが粉砕・撹拌の上、微生物の力で堆肥化。販売もされるので有機ゴミの施設というより、堆肥工場だ。また同施設はエアランゲン市民のみを対象に考えられているが、もし堆肥を買うならば他地域の人も庭木ゴミを持ち込める。

同センターに集まるゴミは年間およそ6,750トン。そこから年間3,200トンの堆肥を「生産」し、すべて売り切れる。

庭木ゴミを収集し、堆肥に変えるコンポストセンター。都市の「緑の循環系」を生み出す場所だ。(高松平藏 撮影)



地域の強さを支える条件のひとつに「地産地消」のような域内での再生産構造がカギになるが、エアランゲンを見ると、有機ゴミと堆肥の「地産地消」が成り立っており、地元産のもみの木を購入することは、地産地消にもつながるわけだ。

読者諸氏が住むまちではどんな循環系があるのか、あるいはどんな循環系を構築できるのか、探してみてはいかがだろうか。(了)


著書紹介(詳しくはこちら Amazon著者ページはこちら

コンポストセンター及び、ドイツの家庭でのコンポストについて書いています。
市民にコンポストセンターのドアを開く「オープンドア デー」の取り組みについて触れています。

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。 著書に「ドイツの地方都市はなぜクリエイティブなのか」など。
2020年には「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (学芸出版 3月)、「ドイツの学校には なぜ『部活』がないのか 非体育会系スポーツが生み出す文化、コミュニティ、そして豊かな時間」(晃洋書房 11月)を出版。一時帰国では講演・講義、またドイツでも研修プログラム「インターローカルスクール」を主宰している。プロフィール詳細はこちら