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中村:しかも、ドイツのクラブでは種目も多い。日本だとサッカー、バレー、野球などメジャースポーツが中心です。日本にも「スポーツクラブ」はありますが、まったく別物です。

高松:人間関係も質的に違いますね。私は若い時から「体育会系」という文化に違和感があった。ところが、ドイツのスポーツクラブでは「先輩・後輩」といった体育会系のような上下関係がなく、むしろスポーツをともにする「平等な関係」を強調する。これは最初の驚きでした。

中村:部活からはじめると、先生と生徒ではじまります。それに対して、ドイツのクラブはコーチも一緒のメンバーという感じがあるときいた。これは日本の学校でまずないです。

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高松:中村さんは中高で部活経験ありますよね。いかがでした?

中村:中学校は「体育会系」ぽくはなかったです。しかし、高校は陸上が強いところへ進学しました。もちろん部活には良いところも、悪いところもあります。しかし、例えば入学した学校が、陸上の強豪校だったら、ゆったりと競技を楽しみたいと思ってもできないと思います。

高松:部活でも「アスリートコース」「楽しみコース」の2種類あるといいんですけどね。

中村:そうですね。大学はいろいろあるかもしれないが、中高は難しいです。

高松:ドイツのクラブの利点は、人生のライフステージと独立して平行にあること。日本だと学校を卒業すると、部活も終わりになってしまいます。

中村:そこが大きな違いとして、私も考えています。中高大はスポーツしていて、大卒後スポーツをする環境がなくなったという話はよく聞きます。特にチームスポーツが難しいですね。わざわざ地元でやってるチーム探して、参加するというのはハードル高い。競技からすでに離れているのに、「チームいれてください」というのも難しい。単独でジムに通う人はいますが、 ドイツのように、気軽にできる環境が整っていないように思います。

女子アメリカンフットボールチーム(エアランゲン市)



高松:いろんな種目にトレーナーのライセンスがきちんとあることに驚いていらっしゃった。

中村:昨今、日本はサッカーは整っていますが、陸上はまだ普及していないのが現状だと思います。時代によってかわるが、知識が古いまま教えたりするケースもある。もうすこし整ったほうが、スポーツをする子供にとってよいと思います。

高松:もうひとつ、ドイツのクラブの特徴をあげるならば、メンバーは「お客さん」ではないということ。「同好会」というとみんなで楽しくスポーツしましょうということなんですが、皆、自由意思ではいっている。

中村:そういう自主性が特徴ですね。

高松:はい。それは、すなわち抜ける自由もあるんだけど、クラブのために貢献する自由もある。これが組織原理。コロナ危機で経済的な問題も大きくなっていて、現実的な対応も必要。そんなときでも、「今、大変だけど、(メンバー個人の)貢献が集まればスポーツクラブは強くなるのではないか」という組織原理を確認するような意見も出ている。

中村:なるほど、そんなふうに「集まる意義」が日本にはない。スポーツクラブといえば、お客様に会費を払ってもらって、スポーツサービスを提供という感じがある。スポーツクラブはドイツの素晴らしい文化だと思う。社会全体の中でスポーツが生きている感じがします。エアランゲンのスポーツアクティビティにもそれを感じました。それについてもお話したいです。

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次回、最終回。佳境に入ります