「スポーツ」がとまった日

2020年4月28日公開

対談
中村友梨香( 元北京五輪・女子マラソン代表
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高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)

コロナ危機はスポーツの現状をがらりと変えた。現在、スポーツクラブNOBY T&F CLUB のコーチや講演、スポーツイベントなどで活躍する中村友梨香さん(元北京五輪・女子マラソン代表)とスポーツは社会のなかで何ができるかを考えた。対談を3回にわけてお送りする。中村さんは2019年にドイツ・エアランゲンにもお越しになった。(対談日 2020年4月9日)

対談 スポーツは社会の中で何ができるのか?
第1回「スポーツ」がとまった日
第2回 ドイツの森とスポーツクラブ
第3回 社会を動かすエンジン

日本もドイツも「スポーツ」がとまった

高松:2019年のゴールデンウィークに、私が住むドイツ・エアランゲン市にお越しになりました。

中村:以前から、スポーツクラブNOBY T&F CLUB(兵庫県西宮市)を主宰している朝原宣治さん(陸上 北京オリンピック 銀)からドイツのスポーツクラブの話もきいていました。さらに日本で高松さんと初めてお会いしたとき、ドイツのスポーツの状況を聞いた。これは行かねばと。

高松:なるほど。朝原さんは現役時代に、ドイツのスポーツクラブでトレーニングされたことがある。「NOBY T&F CLUB」は陸上を扱うスポーツクラブですが、ドイツのクラブをイメージして立ち上げられたと聞いています。しかし、コロナ危機で現在閉鎖とか。

中村:2月最後の金曜日に兵庫県も3月から休校が決まりました。それにあわせるように「NOBY T&F CLUB」も閉鎖。小学生の会員さんも多く、学校も休みになっているのに、密集環境を作るのはよくないですから。(対談当日の段階で)クラブ再開のめどはたっていません。

高松:「NOBY T&F CLUB」以外でも、練習の場に居合わせてコーチをするお仕事多いですよね。

中村:2月にはいってからの週末の陸上教室、マラソン大会は中止。6月にも企業向けの運動促進のプログラムの企画をしようという話がありましたが、これも見合わせる方向になりました。

高松:ドイツも同じような状況です。3月16日からすべての試合、イベント、それにスポーツクラブの普段のトレーニングも休止になりました。

中村 友梨香 (なかむら ゆりか)


北京五輪女子マラソン日本代表
現在、陸上競技のスポーツクラブ「NOBY T&F CLUB」のコーチをしながら、市民ランナーの指導などを精力的に行っている。
中村友梨香 official web site
中村友梨香 ブログ


スポーツ指導者は何ができるか

高松:スポーツ活動が停止になったとき、ドイツを見ると、自宅でできるエクササイズ動画なんかがすぐに、たくさんアップされた。公開のケースもあるし、スポーツクラブのトレーナーが自分たちのコースの人限定で作ったりとかね。

中村:日本でも現役選手なんかがそういう動画配信する人が増えたように思います。海外を見ても有名なサッカー選手なんかが配信していますね。あるいは有名アスリートがオンラインで対談してそれを配信。有料でやっていて、新しい道を探ってらっしゃるのかなと思います。

高松:なるほど、ネットで動画配信という方法じたいは、どうしても考える人は多いですよね。中村さんはそういう計画は?

中村:外出制限されているなかで自分が何をしていけるか。こんなことを、考えることは初めて。模索しながらの状況ですが、動画での指導は今はまだ考えられません。未知の領域でイメージしにくい。ただ、今はみんな時間があるでしょ。今だと文字で書いたものを読んでくださる人も多いと思います。コロナとは別に競技のことは書きたいですね。

高松:すでにブログを持たれているので、そこを深めていこうというわけですね。一方、確かにコーチというのは、空間をともにする機会がなければかなり厳しいですね。

中村:はい。自分のための健康維持、元気でいることなどはできます。しかし、家にいながら他の人に対して、社会に対して何ができるのかといえば、とても難しい。

高松:中村さんご自身、アスリートとしての経験があり、そしてコーチとしてもいろいろ勉強されている。自分のミッション、役割をどのように定義されていますか?

中村:コーチとして行動することで、他の人の気持ちを明るくし、元気になってほしい。文章を通してでも、読んでくれる人が自分の競技にプラスになるとか、単純に楽しくなる、希望がもてる。そんなふうになればと。

高松平藏(たかまつ へいぞう)


ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)プロフィール詳細はこちら




運動できるありがたさ

高松:非常事態宣言が出ているなか、日本の状況はどうですか?

中村:生活必需品の買い物や健康維持の散歩・ジョギングは外出自粛の対象外、大勢で密集して走るということではなければ運動はできます。

高松:なるほど、ドイツと同じですね。私はウィークデーのときはフィットネスバイクを使って自宅で運動。週末は近所の森をジョギングをしています。森では走っている人、散歩、ノルディックウォーキングなどで、けっこうたくさんの人が出ています。しかし、中村さんのようにしょっちゅう体を動かしている人にとっては、制限があるのはけっこうつらいのでは?

中村:私は少なくとも週2回は体を動かしています。これはメンタルの維持にもなってます。予想もつかなかった状態で外出が制限されるようなことはこれまでなかった。運動できるありがたさを感じています。

高松:住んでいらっしゃるあたりの様子はどうですか?

中村:兵庫県内に住んでいますが、公園で遊んでいる子供が増えた印象がある。それと河川敷を散歩する人が多いように感じます。近所の山へお弁当もって家族で行く人もいるようですね。

公園も閉鎖されてしまった(エアランゲン市、2020年3月29日撮影)

高松:ドイツも幼稚園・学校が休校になった当初の公園がいっぱいでした。その後、公園も閉鎖されてしまうのですが。

中村:東京の友達にきくと、散歩している人さえも減っていると聞いています。けっこう地域差はあるでしょうね。その点、エアランゲンの環境はとてもよかったです。

高松:じゃあ、その話を次にしましょう。

次回に 続く

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