ドイツの森とスポーツクラブ

2020年4月30日公開

対談 
中村友梨香(元北京五輪・女子マラソン代表)
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高松平藏(ドイツ在住ジャーナリスト)

コロナ危機はスポーツの現状をがらりと変えた。現在、スポーツクラブNOBY T&F CLUB のコーチや講演、スポーツイベントなどで活躍する中村友梨香さん(元北京五輪・女子マラソン代表)とスポーツは社会のなかで何ができるかを考えた。対談を3回にわけてお送りする。中村さんは2019年にドイツ・エアランゲンにもお越しになった。今回はエアランゲンでのスポーツ環境とスポーツクラブを中心にお届けする。 (対談日 2020年4月9日)

対談 スポーツは社会の中で何ができるのか?
第1回「スポーツ」がとまった日
第2回 ドイツの森とスポーツクラブ
第3回 社会を動かすエンジン

「使える」森がある

高松:私は「都市の発展」をテーマに取材・リサーチを続けてきました。そしてエアランゲン市で「インターローカルスクール」という研修プログラムを主宰。集中講義と町を歩きながら議論するという内容です。
昨年、このプログラムに中村さんは参加いただき、講義のあと、「余暇・運動・健康インフラ」としての町を一緒に歩きました。

中村:印象的だったのが森。「使える森」になっているという話が面白かった。

高松:森じたいが平地で、原生林というわけではない。舗装はされていませんが、整備され自転車も走る。そして普段からジョギングや散歩などに「使える」。
また、エアランゲン自体は小さな都市ですが、町を囲むように森が広がる。だからどこからでも森にアクセスしやすく、自転車道や歩道も整備されています。
まさに森は「余暇・運動・健康」のインフラ。外出制限がかかって以来、森のそういう価値がとても際立ってきました。

中村:確かにエアランゲンはそうでした。住宅地から森へすぐに行けた。これはいいなあと思いました。

中村 友梨香 (なかむら ゆりか)

北京五輪女子マラソン日本代表
現在、陸上競技のスポーツクラブ「NOBY T&F CLUB」のコーチをしながら、市民ランナーの指導などを精力的に行っている。
中村友梨香 official web site
中村友梨香 ブログ



高松:日本のそういう「インフラ」のようなものは河川敷を思い出します。ドラマなんかでも部活のランニングで河川敷がよく出てくる。古い例ですが、「金八先生」なんかもよく川沿いの土手を歩いていた。

中村:なるほど(笑)。日本の運動・スポーツの「インフラ」となると、学校の部活、行政の体育館、そして河川敷という感じでしょうか。
河川敷に野球、テニスするスペースが作られることが多い。ランニングもできるし、自転車用のレーン作られている。なにしろ自動車などを気にしなくてもいいですから。

スポーツ休止、公園も閉鎖されたが、同時に森の価値が際立ってきた。

高松:ドイツは都市全体を俯瞰して、都市計画をすすめる傾向があります。だから、公園や余暇・運動空間、スポーツができる場所など、できるだけアクセスできるよう「全体最適」の配置にしようとする。
拙著「ドイツのスポーツ都市」を読んでくださった人のなかには、人口11万人のエアランゲン市に「ハード整備ですでに負けてる」とおっしゃる方もいました。

中村:日本だとスポーツ少年団とかに入っていれば、子供のときからスポーツに接する機会もある。しかし、住宅が密集しているところは結局、河川敷。東京だと代々木公園とかになるのかな。東京生まれ、東京育ちという人と話していると、運動場でさえも土ではなく、土を触ったこともないという人もいますね。

ドイツと日本の「スポーツクラブ」はまったく違う

中村:ドイツのスポーツクラブは数の多さ、歴史など全部含めてびっくりしました。

高松:「インタローカルスクール」では町の中を歩きながらスポーツクラブのグランドを覗いたりもしましたね。


高松平藏
(たかまつ へいぞう)

ドイツ在住ジャーナリストで当サイトの主宰者。最新刊は「ドイツのスポーツ都市 健康に暮らせるまちのつくり方」 (2020年3月)プロフィール詳細はこちら




中村:はい。その中のひとつにラジコンカーのレースをしているところもあった。これもスポーツクラブの活動に入るのかと驚きました。

高松:チェスやビリヤードなどもスポーツクラブです。日本社会から見るとピンときにくい。スポーツには戦略性、勝敗という要素があります。

中村:日本で中高生がスポーツをするというと、学校の部活が最も身近なスポーツ環境。ドイツは学校と家とはまた違うところにスポーツクラブがある。だから違う学校、違う年齢の人とスポーツができます。

高松:そうですね。

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