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高松:チャドウィックについていった人たちというのは、「若者の反抗」がカギになっている。

西村:うん、チャドウィックから指導をうけた第一世代の話を聞いて思ったのはね、「ああ、この人達は親の言うことを聞かなかったんだな」ということ。親の敷いたレールの上は歩まず、親が描いた成功モデルなんか目指さずに反抗した人たちなんだなと。


繰り返される若者の反抗


高松:この時代、ドイツだと「68年世代」といわれる世代がそうです。ドイツの特殊性からいえば、当時の彼らの親は直接・間接に関わらずナチスに従った。そういう親世代への反抗と説明される。

西村:なるほど

高松:「反抗」というのに焦点をあわせていくと、面白いのはなぜか「自然」に行ってしまう。ここで19世紀からの歴史を俯瞰すると、100年ごとに若者は反抗して、「自然」へ行く。「緑の党」の設立もこの世代が大きく影響した。

緑の党の集会(2020年3月 ドイツ・エアランゲン市 写真=高松平藏)


西村:そうですね。「自然」へ行くんだ。

高松:今、「反抗」するとすれば、どうするんだろ?

西村:ふふふふ。何に異議申し立てするかということですね。

高松:象徴的なのがね、2003年のミック・ジャガーさん()。権力に対する反抗の象徴だったような人がお爺さんになったら爵位をもらった。ローリングストーンズのメンバーにそれを非難されたが「俺たちが反抗していた権力なんてもうない」と発言。もう、どこへ反抗すればいいのか、時代の変化を感じました。(笑)

※ ミック・ジャガー(1943年~)イギリスのロックミュージシャン。1962年結成のロックバンド「ザ・ローリング・ストーンズ」のボーカルとして世界的に有名。このバンドは反体制・反権力としてのロックの代名詞のような存在。


反抗から持続可能性へ


西村:僕は博士論文で日本の自然学校()のことを書いた。1980~90年代にかけて、日本各地で自然学校を創業したパイオニアの人たちは当時の社会のあり方への異議申し立てをやったと見ています。

※自然学校 キャンプ、ハイキング、農業や漁業の経験といった自然体験の活動を受け入れる施設や組織をさす。

高松:その対象は3点に絞れるとか。

西村:はい。まずは、教育への異議申し立て。特に学校教育に対するものでした。

高松:なるほど。

西村:それから環境教育をしっかりすべきだと。つまりそれは産業文明への異議申し立て。

高松:それで3つめは?

西村:いわゆる都市への集中と田舎の過疎。IターンやUターンして田舎でもって新しい学びの場を作ろうと。これは都市化への異議申し立て。

高松:よくわかります。

西村:だけど、21世紀に入ってどうかというと疑問もある。同時にある意味それは続いているようにも思います。

写真=「未来のための金曜日」のデモ。21世紀の「若者の反抗」?(2020年 ドイツ・エアランゲン市 写真=高松平藏)



高松:そうですね。ドイツの様子を見ていると「反抗」していた「68年世代」が1990年代最後半から権力側になっていきます。当時、行政や会社でもこの時代の雰囲気を残したマネージャーがいた。

西村:なるほど。

高松:ゲルハルト・シュレーダー首相(1998 – 2005年)やヨシカ・フィッシャー外相はその典型。同時に「持続可能性」というきれいな言い方が広がってきた。

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