対面交流プラットフォームになっていることに驚いた

2025年8月13日 文・高松 平藏 (ドイツ在住ジャーナリスト)
これまで「万博」と聞くと、「昭和の経済繁栄」を象徴する一大イベントというイメージが強く、対外的には国威発揚の場だった。しかし、現在開催中の万博をドイツでSNS越しに覗くと、それとは異なるもう一つの顔──テーマに沿った国際的な交流プラットフォームとしての機能──が、より鮮明に見えてくる。例えば、知人が「参加した」というカナダ館の事例。そこでは、先住民族のビジネスにフォーカスしながら、両国の女性経営者同士が連携などを話し合うセッションが開催された。
こういう様子を垣間見ると、ドイツに見る「メッセ(見本市)」の変化と重なる。かつてメッセはは新製品の発表や商談が中心だったが、ネットで商品の情報発信・収集はかなりできるようになった。またコロナ禍でオンライン会議が普及した。それでも多くの人々は「直接会う機会も欲しい」と考える。そこで、一斉に集まれるメッセで効率よく会おうというわけだ。メッセ会場で、多くの出展企業が自社のブース内でカフェコーナーなど交流空間を拡充しているのはその表れだ。
1970年の大阪万博は、多くの人にとって、それこそ「混雑御礼」といった光景が中心だと思う。だがSNSを通じて見えてくるのは、リアルな「実社会のアクター」同士の交流である。昭和の万博にもそうした側面はあったと思うが、報じられるのは「要人の訪問」が多かったのではないかな。
もし今、万博を「対面交流のプラットフォーム」と明確に位置づければ、会場の立地や設計、予算の使い方も大きく変わってくるのではないだろうか。(了)
高松平藏 著書紹介(詳しくはこちら)
ドイツの地方都市はどのように「都市の質」を高めているのか?

執筆者:高松平藏(たかまつ へいぞう)
ドイツ在住ジャーナリスト。エアランゲン市(人口約12万人 バイエルン州)を拠点に、地方の都市発展を中心テーマに取材、リサーチを行っている。執筆活動に加えて講演活動も多い。 著書に「ドイツの地方都市はなぜ元気なのか」「ドイツの都市はなぜクリエイティブなのか」など