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2003-11-21

 


メルセデス・ベンツと写真集、
メセナ
(文化支援)をめぐる地元志向の好循環


左から写真集を発案したカール・マンフレッド・フィッシャーさんとリサ・ピュープラさん、経済的支援を行ったミヒャエル・ピッケルさん、シーグフリード・バライス市長と写真家のゲオルグ・ポエラインさん。「地元志向」の循環を支える顔ぶれだ。

 ドイツ南部の 10 万人都市、エアランゲンで、このほど自動車販売店のサポートにより、地元および周辺地域の文学作家の写真集を発行した。

 発行記念パーティがおこなわれたのは 9 月 30 日の夜。ドイツを代表する高級車、メルセデス・ベンツの車両販売店の駐車場に次々と自動車が流れ込み、途切れることなく人々がショールームに吸い込まれていく。

 約 350 人の人々で埋め尽くされたショールームでは、おもむろにアコースティックギターの演奏とそのリズムにあわせて歌うような詩の朗読がはじまった。同市も含むバイエルン州北部のフランケン地方とよばれる地域にゆかりのある文学作家のポートレートを収めた写真集の発刊記念のセレモニーが行われた。

 この写真集はエアランゲン市のギャラリーを担当しているカール・マンフレッド・フィッシャーさんとリサ・ピュープラさんが発案。 98 年から 2 年ごとに行われている催し、『フランケンの文学風景』の流れのなかで出てきたアイデアだった。

 撮影を担当したのが同市在住の写真家ゲオルグ・ポエラインさん。フィッシャーさん、ピュープラさんの 3 人で文学作家 54 人を選んだ。いずれもフランケン地方に住んでいたり、住んだ経験がある。あるいは同地方のことを作品でとりあげたことがあるという作家ばかりだ。

これをサポートしたのがエアランゲンに隣接するニュルンベルグのメルセデス・クライスラー代理店とセレモニーの会場にもなった自動車販売会社オートハウス・ピッケル。

 同販売会社は 1933 年に現社長のミヒャエル・ピッケルさんの父親が創業した。今回は経済的に苦しい時期にもかかわらずニュルンベルグの代理店と共同でなんとか支援できたというピッケルさんだが、同氏は普段から地元のスポーツ関係や社会福祉事業への支援も行っている。数年前にエアランゲン市でできた文化財団の立ち上げメンバーでもある。『当社が販売するメルセデス・ベンツは(高級車として)特別なイメージがある。したがって市民も期待しているし、地元のためにもそれに応えたい』とさらりという。

 さて、この一連の出来事から浮かんでくるのは徹底した地元志向だ。地方にまつわる文学作家の写真集が地元の文化行政マンと写真家によって作られ、地元の企業が経済的支援をしている。しばしば『豊かな』という枕詞がつけられるドイツだが、こうした地元志向の循環が地域社会の豊かさにつながっている。(了)


(『週刊京都経済』 2003年10月20日付に掲載分)

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【編集メモ】 『目的としての地域』
          〜松嵜教授、いかがでしょう?


◆9月の半ば、松嵜久実さん(浦和大学短期大教授)がドイツに来られました。まだ、夏の光が残る時期、ニュルンベルグ市内のオープンカフェで数時間お話する機会がありました。

◆同氏は専門の経済学から福祉関係の研究をされています。その目的は自律した地域社会のモデルを構築することにあるとのことです。一連の話の中で印象に残った言葉が『地域のヒトや資源を手段ではなく、目的に』というもの。

◆メルセデス・ベンツの販売店と写真集の企画はまさに、地域そのものを目的化しています。地域社会の文化度を向上させ、人々の交流の促進、文学という地域文化資源の顕在化といったことに一役も二役も買っています。そして販売会社にとっても自動車の持つブランド力を高め、地域社会とのつながりを深めることにつながります。松嵜教授、いかがでしょう?(高松 平藏)

 

 

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