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/// インタビュー ///

2003-06-25

 


EU拡大、台頭する地方主義
地域報道の役割大きく
 
ジャーナリスト ヘルベルト・ハイツルマンさん

全国紙が主流の日本に対して、ドイツは地方紙がよく読まれている。バイエルン州のニュルンベルグとその周辺地域で活動をしているジャーナリスト、ヘルベルト・ハイツルマンさんにドイツの地域ジャーナリズムについてきいた。(聞き手は高松 平藏/ドイツ在住ジャーナリスト)

ジャーナリズムの変化と経営

■たとえば、ニュルンベルグの隣に位置するエアランゲン市はたった 10 万人の小都市。それでも『エアランガー・ナハリヒテン』という街の名前がついた新聞が市民によく読まれている。

『そうですね。ただし経営的には同地方の有力メディア企業、ニュルンベルガー・プレッセ社がエアランゲンはもとより、周辺地域の街の名前がつく新聞を一手に発行している』

『同社は新規参入しようとする新聞を排除するようなところもあり、同地方の新聞市場を独占しています。しかし、同社が経営母体になることで街の小さな新聞が生き残っているという面もあります』

『エアランガー・ナハリヒテン紙もかつて、独立していましたが、同社に買収されました。小さな新聞が廃刊になるよりも、こうしたかたちででも発行されるほうが職場も維持されるし、メリットもあります』

■地域の情報インフラを担うという意味で地方紙の役割は大きいですが、プレス発表がそのままの記事も多いように見受けます。

『批判や評論といった記事が以前に比べて減っています。新聞社は読者を集めるためにはサービスが必要だと思っている』

■国民国家という文脈の中では『反国家』『反権力』という立場と役割がジャーナリズムにはありました。そのせいか、かつては社会的な問題をとりあげることがもっと多かったと聞きます。

『昔の報道の役割は今とすこしちがっていました。議論の場や批判なども新聞にはほしいところですが、昨今、多くのジャーナリストはそれを避ける』

『特に若いジャーナリストは有名になるために、一般の意見をきれいにまとめてしまう。そういう道から離れたくない、あるいは、面倒くさいことは避けている。(社会的な)戦いの楽しみを知りたいとか、戦いたいという若いジャーナリストはほとんどいませんね』

■ハインツルマンさんは大学で教鞭をとっていますね。学生のジャーナリスト志望の動機は?

『“あこがれ”です。メディアで働くことは夢の仕事なんです。しかも、大学で決まった範囲の勉強以外はしないという学生も少なくない。授業の中でもう少しアタックする精神や勇気を育てようとしていますが、なかなか難しいのが現状です』


地域新聞の可能性

■広告収入の低下などドイツの新聞業界も低迷しているところが多い。


『ニュルンベルグおよび、その周辺地域でも同様です。定期購読が減っている上、長引く不景気が影響して広告収入という面でも問題が出ている。編集局の統廃合も進んでいます』

『厳しい経営環境ですが、プリントメディアにもチャンスはると思います。一時期、ドイツの地方は“必要だ”と感じて、こぞってテレビ局をつくった。しかし静かに幕を閉じていった、というのがその結末。ラジオ局も同様です。有力メディア企業のニュルンベルガー・プレッセ社も“必要である”という理由だけでラジオ局を運営している』

『テレビ局が地方でうまくいかなかった。ここにプリントメディアのチャンスがあると思っています』

■これからの地方紙の意義は?
『今日、地方ジャーナリズムには大きな意味があります。なぜなら人々は自分の街で何がおこっているのかを新聞を読んで知るからです。また、依然ディスカッションの舞台になるのは新聞です』

『世界の出来事は地方紙にも一面に掲載されていますが、テレビがいち早く伝えてしまう。いずれは地方の出来事がもっと一面にくるケースが増えるのではないでしょうか』
『また、このところEUの拡大傾向にあるわけですが、ヨーロッパが大きくなればなるほど欧州の地方主義がスローガンになる』

『今日、ヒトはダイナミックに動きますが、起点がどうしても必要になります。すなわち地方が必要なんです。地方の意義はこれから強くなってくると思います。自分の言葉が通じて、自分の好きな食べ物が食べられる。こんな環境がヒトには必要なんですよ』


≪取材メモ≫地方の自律のために
ドイツは環境先進国として知られているが、たとえば、10 万人都市のエアランゲンは 90 年代初めに同市の環境局が盛んにプレス発表を行った。街の環境問題を街で取り組む推進役になったことは想像に難くない。地方の自律性を高めるには地方紙の役割はきわめて大きいといえそうだ。(了)


Herbelt Heinzlman(ヘルベルト・ハインツルマン)さん
ニュルンベルグ在住のジャーナリスト。
エアランゲン大学在学中から『ニュルンベルガー・ツァイトゥング紙』に映画の評論を執筆。卒業後そのまま同紙へ。 93 年独立。最近はジャーナリストよりも大学の教壇に立つことや、ラジオの番組制作の仕事が多い。著作に 2001 年に子供向けにメディアの仕組みを解説した『Fernsehen(テレビ)』がある。 54 歳。



(『週刊京都経済』 2003年4月14日付に掲載分)
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