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2002-03-06
失われた信用をとりもどせ
四日市市・加藤牧場
畜産ベンチャー支える「二宮尊徳」の思想
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【三重県】狂牛病は社会に対して大きな影響を及ぼした。そこへ追い討ちをかけるように雪印をはじめ、食肉加工販売会社の牛肉偽装が発覚。消費者の不信感が一層高まっている。そんななか、二宮尊徳の思想をもとに、循環型の和牛を生産している加藤牧場(三重県四日市)がある。(2002年3月4日付『週刊京都経済』掲載分)
■牛で社会貢献
四日市駅から車で約30分の距離に広がる住宅街がある。その目と鼻の先に牧場がある。
加藤牧場、約2ヘクタールの敷地に繁殖牛270頭、肉になる肥育育成牛550頭を飼う牧場だ。通常、繁殖と肥育は分業している。しかも、繁殖専門の牧場が扱う繁殖牛の数は10頭以下というところが多い。個人経営の牧場としてはかなりの規模の牧場だ。
さらにユニークなのは、近隣農家との連携だ。牛の糞からできるたい肥と農家から出る稲わらを交換するという「業務提携」を行なっている。
加藤勝也さん「農業ほど面白いものはない」わらは牛の粗飼料になる。たい肥を散布した水田は地力が高まり、化学肥料に頼らない米づくりにつながる。しかもたい肥を入れれば入れるほど良質のわらが回収できるという好循環が生まれる。
「牧畜は土作りまでできる。牧草をつくると緑化にもつながる。社会貢献につながっていると思う」と牧場の経営者、加藤勝也さんはいう。
■飼料会社と双方向の関係をつくる
「BSEの問題はずいぶん勉強になった」
と加藤さんは振り返る。なぜならば、自ら牧畜のありかたを検証することにつながったからだ。
たとえば、加藤さんは10年前から試行錯誤のうえつくりだしたオリジナルブレンドの配合飼料をつかっている。4年前からは飼料会社に逆発注するかたちで作ってもらっている。
肉牛生産者は通常、飼料会社が製造する飼料を一方的に買うだけというところがほとんどだ。値段も事実上、飼料会社の言い値ということが大半。それに対して、加藤さんは飼料会社と「時にはけんかのような議論」を積み重ねて配合飼料の内容と取引方法について双方向の関係をつくってきた。
そこへ肉骨粉混入が狂牛病の原因ではないかという疑いが出てきた。加藤さんはさっそく飼料会社と一緒に飼料の原料を調べた。9種類の原料は小麦の外皮、大豆油の絞りかすなどだ。中には日本の酒米を精白した残りなどもある。「ほとんどが、人間が食べるために輸入した穀類。その中で使えない部分を飼料としているということがわかった」
衛生管理は経営の柱同氏は飼料サンプルと生産地や加工方法を記したボードを作成。機会があるごとに説明をしている。今年の1月にも四日市市内でおこなわれた「環境を考える集い」でも飼料サンプルボードを持参。
「牛肉をたくさん食べることは環境にもいいんです」と循環型の牧畜方法を説明し、飼料の安全性を訴えた。
■畜産ベンチャー支える「二宮尊徳」の思想
農家との連携、飼料会社との双方向性の関係作りのみならず、新技術の導入や、繁殖・肥育のための工夫を加藤さんは行なっている。
畜産ベンチャー然とした経営を支えているのが「以徳報徳」。二宮尊徳の言葉だ。同氏は高校野球の名門で知られる報徳学園の卒業生。毎週「報徳講和」という授業があった。そのときに「徳を以って、徳に報いる」という言葉が加藤さんの琴線に触れた。牧畜に取り組むときに、その言葉が重なり合った。
「まわりの人に喜んでもらうことで、自分にもかえってくるということだ。たい肥で農家に喜んでもらう、いい肉を卸すことで、肉屋さんにも喜んでもらう」。
さらにこう続ける。「この考え方は、日本の“農”にあるもので、今の社会には欠落している。ひいては社会不安の原因になっているのでは」。
狂牛病の背景には肉牛を育てるというよりも「肉牛工場」のような仕組みになったようなところが少なからずともある。環境問題をはじめ、現代社会が直面しているものには「合理化」のツケのようなものが多い。加藤さんには狂牛病問題もそのひとつだ
と映る。
「うちも機械の導入など合理化はしている。しかし、地元のものを食べさせて、地元にかえすという考え方が基本」。理念や哲学のないままに、利益第一主義の合理化は筋違いというわけだ。こういった経営方針に農業と社会の新たな関係性がある。(了)
手製のサンプルボード
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