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/// インタビュー///
2002-02-08
SOHOは新しい価値観だ
身の丈にあった多様な生き方を
日本SOHOセンター(JSC) 理事長 花田啓一さん
【東京】数年前から新しい働き方として注目されてきた SOHO(Small Office Home Office)。しかし「ITを駆使した個人事業者」「自宅か小さなオフィスで開業」といった表面的な部分での理解でとどまっていることが多い。そんな現状に対して、このほど「SOHO新時代が始まった─『個』を活かす自分流ビジネス」を出版した花田啓一さんに話をきいた。(聞き手は高松平藏/2002年1月28日「週刊京都経済」掲載分)
──花田さんはライター、編集者としても活躍している。
「こうした職業はもともと、個人事業者のような要素が強い。私は今年50歳になるが、それでも若いときから漠然と『会社で働くこと』が念頭にあった。そして実際に会社員として働いていた時期も長かった」。
「つまり戦後、サラリーマンというのは日本人が共有していた大きな価値観であり、生き方だった。だから、『お仕事は?』と聞かれても『サラリーマンです』と答える。きいたほうも『そうですか』と納得する。だいたい、日本には経営者であっても『サラリーマン社長』という実に矛盾する言葉があるぐらいだ」。
「私はじしんは、SOHO者(ソーホーもん)と名乗っている。サラリーマンという生き方へのアンチテーゼだ」。
──SOHOというと、ITと切り離せない印象がある。
「パソコンを使うからSOHOというわけではない。むしろ、一緒に仕事をしていく人とつながっていこうとしたときにITが格好の道具だった。SOHOと呼ばれる人は結果的にネットワーカーだった、というのが正確なところだろう」。
◆花田啓一(はなだ・けいいち)さん
1952年大阪生まれ。
大学中退後アメリカへわたる。英語を学んだのち、邦字新聞「U.S.JAPAN BUSINESS NEWS」の記者に。81年に帰国。その後、様々な媒体にかかわり、JR東海グループの雑誌「WEDGE」を経て97年独立。98年に日本SOHOセンター(JSC)の設立。理事長に。1月11日に著書「SOHO新時代が始まった─『個』を活かす自分流ビジネス」(岩波アクティブ新書)が発売された。──ベンチャーとの違いは?
「SOHOの極意は『身の丈にあったことをする』ということ。ベンチャーにもいろいろあるが、中にはナスダックに上場することが目的になっていたり、借金をして『身のほど知らず』の仕組みをつくるケースも少なくない。それに対して、SOHOは自宅でパソコンが1台あればできることだ」。
「『身の丈』というとネガティブな印象があるようだが、身の丈を拡大したり変化させることはおおいにやればいい。自分の身の丈がわかっていると、失敗しても戻れるところがある。これが大切だと思う」。
──雇用の受け皿としてSOHOが注目されている。
「サラリーマンという価値観には『公私混同すべからず』というルールがある。それに対して、SOHOは『公私融合』なんだと思う。つまりワークスタイルとライフスタイルの融合であり、生き方とか哲学が仕事と密接につながったものだ」。
「SOHOはサラリーマンに変わる価値観。会社本位か個人本位かということだ。だから、リストラにあったからSOHOで開業するというのでは、価値観の全く違うことをするわけで、これは難しい」。
──終身雇用が崩れるなど会社も変わってきた。
「サラリーマンという価値観が内側から崩壊してきた。現象的にいえば派遣や契約社員がずいぶん増えた。ところが正社員なみの仕事をしているのに給料が少ないなど不満も増えてくる。こうした不公平感が爆発すると『個人本位』、つまりSOHO的な価値観が一気に広がるだろう」。
──生き方の選択肢が増えることはいいが、SOHO事業者のセーフティネットは脆弱では?
「政治には企業でいうところのマーケティングがない。だから勘違いの政策が生まれる。病気をしたり、出産・育児のために休暇をとることも難しいのが現実。これはおかしいと思ったことが日本SOHOセンターの設立につながった」。
「一方、どのような名刺をつくるべきか、法人格をとるべきかどうか、事務所を構えるべきどうか、自宅を事務所にする場合、電話回線は1本がいいか2本がいいか。SOHOに関してそんなノウハウだけが横行している。答えは個人に応じて最適な方法をとればいいわけで、むしろ、生き方としてのSOHOはこうあるべき、という論がないのが現状。これが本の執筆に私を駆り立てたわけだ」。
【取材メモ】パラダイムシフト
経済成長のために「身のほど知らず」の拡大に専念してきたのが日本経済。その臨界点がバブルだった。
極端な拡大思考が横行するなか、おろそかにしてきたのが「個人」。転勤族という言葉があるが、これも会社の意向に家族が従属しているかたちで、会社本位の現象だ。これは生活空間をおろそかにする結果につながり、地域の崩壊の一因になった。
そんな今、「会社本位から個人本位に移ることが本当の構造改革だ」と花田さんはいう。(了)
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