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/// 評 論 ///

2001-10-09

 

インターローカル戦略 第9回 

「セカンド モダン」という視点

 


【週刊京都経済 2001年9月25日掲載】 これまでの社会に隠れていた思考とは、「常に限界を超えること」だった。この考え方は生産性の高さなどと結びつき、物質的には豊かな社会につながった。一方、これからは本当の意味で個人の選択肢の多い社会をつくっていく必要がある。

■自転車道とハールベーク博士
これまで、本稿でたびたび登場したドイツ南部のエアランゲン市は「環境共生都市」として知られている。それゆえ、環境や都市計画の見地から日本人が視察に行くケースもしばしばある。

環境共生都市を象徴するのが、整備された自転車道だ。現在5割程度が整備されている。市内の本屋さんでも買える自転車道専用の地図を見ると、網の目のように自転車道がはりめぐらされているのがわかる。

自転車道を整備したのは、前市長のディトマー・ハールベーク博士。同氏が市長になった1972年から整備をはじめた。

自転車道といえば昨今、環境配慮の交通システムとして語られることがほとんどだが、ハールベーク博士自身の中では人権問題という意識も強かった。60年代初頭に同氏は米・ピッツバーグに1年ほど滞在。目の当たりにしたのは自動車と駐車場ばかりだった。アメリカが「自動車マニアの国」になっていると感じた。そして自動車優先という考え方に危機感を覚えた。当時、欧州も同じ方向に進んでいたからだ。「歩行者、自転車、自動車を平等にしなければならないと思った」とハールベーク博士は振り返る。

■都市計画に必要な理念
ところで、欧米で発達した「モダニズム」は多くの国の政治や経済を動かす基本的な考え方として機能してきた。時代とともに人権思想や個人主義といったものも成熟させてきたが、常に「より早く」「より強く」「より大量に」という進歩史観に基づく考え方が通奏低音のように響いていた。モータリゼーションの発達はモダニズムの1つの象徴だ。

ハールベーク博士の自転車道はこうしたモダニズムに対して問題提起を行なったかたちだ。つまり、本当に人間を第一に考えた交通システムとは、個人が選んだ交通手段でもって、安全で快適な移動が行なわれるべきだということだ。常に限界を超えようとする考え方とは一線を画す。成熟社会では人間第一主義ともいえる「セカンド モダニズム」、すなわち「選択肢の多さ」「安全性」「最適性」を優先する考え方に移行しなければならない。

さて、日本の交通システムはどうかといえば、お寒い状況だ。足腰の弱った人が使う電動式の車椅子が交通事故にあうケースが増えている。大阪では通学途中の子供の交通事故増加も報じられている。地方の農免道路にいたっては、事実上の自動車道だ。そこを農繁期ともなればクワを担いだ高齢者が歩く。自動車のドライバーからみれば日本には危険な道路が多すぎる。昨今盛んになった「まちづくり」の現場でも、「自動車の通りやすい道を」という利便性追求の意見がでることもまだまだあるという。

一方で、自動車メーカーの中には、1人乗りの自動車や電動駆動式の自転車など用途に応じた交通手段を選択できるシステムを開発する動きもあり、企業サイドのほうから成熟社会へのアプローチが始まっているから地域の都市づくりもうかうかしていられない。

ひるがえってエアランゲンの自転車道整備の成功につながったのは、ハールベーク博士自身がプロジェクトリーダーになったことだろう。スタッフは都市計画、財務、警察、自転車協会、不動産、土木関係といったところから選んだ。これによって「車も人も自転車も平等に」という同氏の理念が組織を横断して実効した。市長が変わった現在も自転車道の整備は着実に進められている。(つづく)


50歳の誕生日に地元のアーティストから送られた絵を持つハールベーク前エアランゲン市長。

 

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