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/// コラム///

2001-10-03

 


報復に反対するアメリカ人

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【週刊京都経済 2001年10月1日掲載】 国のテロ事件で浮上してきたのが、「テロ反対」「報復行為反対」という世論だ。こうした意見のむこうには国家の役割とは何かを模索する時代にはいったことを示唆しているのではないか。メールで送られてきた、ミシガン州在住のアーティスト、ジル・ドノバンさんの意見を中心に考えてみる。

■カウボーイ メンタリティは通用しない
事件直後のブッシュ大統領の発言について、「カウボーイ スタイルの大統領は嫌いだ」とドノバンさんは記す。

「カウボーイ」という言葉はノースキャロライナ州でコンサルタントをしているウォルター・ジョンソンさんも用いる。

「50年間アメリカは国際的な紛争を(アメリカの本土外の)空中で処理してきた。そういう 『カウボーイメンタリティ』 は長短期的にみても国際的には賛同を得られなくなっている。旧約聖書の中の『目には目を』というやりかたは古くなった」。

世界の警察とされてきたアメリカだが、民主主義を守るという正義のもと、軍事力を行使してきた。報復は報復を呼ぶ。アイオワ州の中学校教師、エレイン・イマロウさんは「これまでの政府のやってきたことが(結果的に)今回のテロにむすびついた」と分析する。

なぜアメリカ人がいつも、憎まれ役になるのか――。「この単純な質問に対して、沖縄からアメリカまで世界中から様々な答えが出てくるだろう。しかし、その答えを分析して、私たちの国外にむけた政策の変更を考えるべきだ」(ジョンソンさん)。

■大統領のレトリック
 「公式の表現がずいぶんかわった」
ドノバンさんはブッシュ大統領の言葉の選びかたを指摘する。

事件直後、大統領はしきりに『Crusade(十字軍)』という言葉を使った。失言だった。事件直後、原稿を見ない状態で大統領自身の気分がかなり反映された時期とみられる。

ところが、アメリカといえば、多文化国家の代表のような国だ。そんな国の大統領が発したのが「十字軍」だった。米国内には600 万人のイスラム教徒がおり、キリスト教以外の人も多い。ドノバンさんはそれを考えると、「カウボーイ大統領」の発言に対して腹立たしさを覚えた。「注意深く言葉は選ぶべきだ。彼が喋るたびに多くのアメリカ人が(大統領支持から)遠ざかっていく。ナショナリズムと国旗の波は、私たちをナーバスにする」(ドノバンさん)。

しかし、最近になって、政府や側近のコントロールがはいってきたのか、『campaign(戦闘、作戦)』という表現になってきたという。
 
■インターナショナルの再考必要
ところで、冷戦終結後、盛んにいわれたのが民族と異文化の時代の到来するということだ。皮肉にもテロ事件は国際的に多文化の国民をかかえる国家が増えていることを浮き彫りにさせた。

大統領の十字軍という表現をそのまま受け取れば、まさに今回の一件は宗教戦争だ。しかし、いまや一民族一国家、一宗教一国家という時代ではない。逆に宗教や民族が国家の形成に拠っている国ほど困惑がある。例えば、トルコなどはイスラム教徒の多い国だが、軍事的にはNATOの一員だ。アメリカが「宗教戦争」と位置付けてしまうとトルコは立場がなくなってしまう。『campaign(戦闘、作戦)』という表現の変化は、結果的にアメリカ政府がそのことに気がついたということだろう。

また、国民国家という概念が危うくなったといわれて久しい。しかし、国家という仕組みは19世紀以降、世界をかたち作ってきた。そしてまだまだその役割はある。つまり、多文化国家時代のインターナショナルとは何かを模索しなければならない時代になった。そう考えるとパレスチナ問題などは、単純化すると、いかにも19世紀的な国民国家像に基づいた対立なのである。

国家という枠組みと、文化、民族、宗教が限りなく対等に絡み合う時代にあって、神や宗教に理性をコントロールされると悲劇がおきる。ドノバンさんは「今こそ、より冷静な理性が人々のあいだにあることを願ってやまない」という。 (了)

 

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