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/// 評 論 ///

2001-08-09

 

インターローカル戦略 第4回 

都市の質を高める

リビングスタンダートとは何か

 


【週刊京都経済 2001年8月6日掲載】「豊かな社会」とは何か。日本は金持ちにはなったが心が貧しい。心も豊かになるような社会にしましょうということだろう。しかし心を豊かにできるような環境は何かといわれると難しい。個人のクオリティ オブ ライフの向上につながる公共財、「リビングスタンダート」とは何かという視点で考えてみてはどうだろうか。

「芝生スピリッツ神戸」というNPOがある。日本のグランドや校庭の地面といえば土。そんな常識に対して、小学校の校庭に芝生を敷き詰めようという運動を行なっている。

きっかけは神戸製鋼のラグビーのグランドだった。発起人の1人は同社のグランドへよく練習を見に行っていた。「芝生は気持ちがいい」と感じた。そしてこんな環境はもっと身近にあるべきだと考えた。つまり、同NPOは生活の中に当然あるべきもの、新しいリビングスタンダートを提案したかたちだ。

芝生化を進める中で困難なことは、共感を得ることだという。芝生は都市の緑化や、転んでもけがをしないなど利点はあるが、科学的に価値を立証するのは難しい。芝生のある校庭は贅沢なものだと思う人さえいる。

道路や文化施設などは機能性や象徴性がくっきりしているので、公共財としてまだ議論しやすいが、生活の質を高める公共財やサービスについては具体化しづらい。文化経済学の先駆、池上惇さん(京都橘女子大教授)によると、日本では民芸運動といったかたちで、生活空間に芸術的なものを取り入れ、個人の生活の質を高める動きはかつてあったという。しかし、生活の質を高めるためのインフラづくりとなるとまるで鈍い。

 「生活大国」としばしば言われるドイツはどうだろうか。日本人から見るとドイツ人は相当わがままにうつる。何かあればすぐに「これはストレスだ」と文句をいう。しかし考えようによっては五感で感じる快適性とは何か、精神的に何が快適かということを明確にもっており、共有していく力がある。これがあるから地域のリビングスタンダートや「生活の質」の最低限の保障ラインが決まってくるのではないか。

だから住宅が並ぶ道を広げて、自動車がびゅんびゅん走るようなことにはまずない。ドイツは環境保全の先進国でもあるが、森が酸性雨で枯れてくるということが動機のひとつになった。何しろ、彼らにとって森は散歩や憩いの場所である。生活の質を支えるものが壊れると困る。

先月、南ドイツのエアランゲンから興味深いニュースが飛び込んできた。街のメインストリートの広告看板はすべて廃止。オープンカフェで使うイスやテーブルもプラスティックではなく木などの素材を使うことが市議会で決まったそうだ。市民のわがままと見るか、クオリティ オブ ライフの向上欲求の結晶とみるか。とにかく、現状の日本の議会では議論にもならない話だ。今、都市の質を高めるには、芝生スピリッツ神戸のような「スピリッツ」を増殖させる必要がある。(つづく

「生活の質」の向上欲求から「都市の質」につながる構造(図をクリックすると拡大します)

 

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