インターローカル ニュース
Inter Local News

 

///ニュース///

2001-05-21

 

元祖「環境運動」からの視点

結果対策から原因対策の強化を

 

【大阪】 1971年に設立された『大阪から公害をなくす会』(大阪市此花区)の林功さん(事務局長)はこのほど、企業や行政の情報開示を徹底すべきという見解をのべた。昨今、地域づくりのありかたのなかで、行政、企業、市民のパートナーシップで進めるべきという考え方の広がっている中、課題点を明らかにしたかたちだ。

昨今、NPO 活動が活発化している。こうした動きは企業や市民、行政が協力しあって、地域づくりや環境配慮型の社会をつくるべきという方法論のコンセンサスにつながっている。

これに対して、林さんは「ずっと求めてきた姿だ。すばらしいことだ」と評価する。同団体は典型的な住民運動。いわば、市民参加と情報開示を公害運動という側面から先進的にやってきた団体だ。

しかしながら、行政に対しては情報公開の徹底と、行政の役割を明確にまっとうすべきとの注文を同氏はつける。

情報公開の徹底とは協働時代の基礎部分だ。つまりパートナーシップという形をとるためには、諸々のデータや情報を共有する必要があるからだ。「情報のオープン化は企業にも求められる」(林さん)

加えて、環境配慮型の社会を目指すには、地域社会そのものをシステムとして捉える必要がある。実際、大気汚染の問題などは、工場ばかりが原因ではない。近年、大阪にいたってはトラックが増加、マイカーも減らない。こうしたことが二酸化窒素による大気汚染の大きな原因になっている。

林さんがいう「行政の役割」とは条例などの直接的規制や、税金などのコントロールなどで誘導規制を行なうだという。いわば権力を適切に使うことで、環境配慮型の社会システムにつなげるべきだというわけだ。ここで重要なのは権力行使の背後にある考え方だ。「行政の役割は事業者の優遇ではない。市民生活を守ることだ」(林さん)

抗議から協働へ。結果対策から原因対策へ
ところで、公害は環境意識につながった発端の1つだ。環境先進国とよばれるドイツもルール工業地帯の大気汚染がひとつの原因だった。

大きな流れでいえば、公害という「結果」に対して抗議していたのが住民運動。公害の「原因」から対策を講じていくのが環境運動といえる。昨今、環境保全につながる仕事などに就きたいという学生が増えているが、これは「原因対策」に関わる人の増大や意識の強化と見て取れる。

一方で、林さんによると『公害』という単語そのものが法律上でも消えていく傾向にあるという。「公害は社会的な概念だ」(同氏)。まだまだ、大気汚染などの問題で、疾病にいたる不健康な状態は随所にある。そんな中、社会的概念で捉えることがなくなっていくことに林さんは危惧を抱いている。

さらには、ダイオキシンや放射能など、五感で関知できない汚染の危険性も現代社会には孕んでいる。いわゆる「危険社会(※)」だ。

かつての公害は特定の地域でおこったために、結果対策でも改善の余地が少なからずともあった。しかし、今後考えられる汚染の範囲は国や地域などを超える可能性が高い。原因対策をさらに強化する必要性がある。「次のしっぺがえしが出たら、とんでもない規模の健康被害がおこる。予防原則の徹底は不可欠だ」と林さんは強調する。(了)

※危険社会
ドイツの社会学者、ウルリヒ・ベックによって同名の著書がチェルノブイリ原発事故がおこった86年に刊行された。原題は"RISIKOGESELLSCHAFT Auf dem Weg in eine andere Moderne"。環境問題を社会学の文脈で語られるきっかけになった。日本版は法政大学出版社から出版されている。(「危険社会 新しい近代への道」 東廉 / 伊藤美登里 訳)


林 功さん

 

 

 

 

|インターローカルニュースtop | 記事一覧 |