-the ART journal-

 

///ニュース///

1999−07−22

 


タッフェル ホール(Tafelhalle/ Nuremberg)

上演内容拡大。新たな観客層の開拓目指す

変化する文化シーンに対応

【7月22日=エアランゲン】南ドイツ地方都市・ニュルンベルグに位置するタッフェル劇場=写真 はこのほど、今後上演内容の拡大をはかる運営方針を明らかにした。同劇場は、舞踊公演に適した設備を持ち、結果的に「ダンス公演」専用ホールといったイメージが自然にできた。そのためにダンス以外の観客に対して訴求力が弱く、観客動員数が頭打ちの状態だった。

同劇場の運営責任者、ミヒャエル・バーダーさんによると、今後新たな客層を開拓するために、演劇、音楽、ダンスなど上演する演目の幅を広げる方針であると述べた。

タッフェルホールは、大小2つのホールを持つ。小ホールが99席、大ホールは500席。舞踊公演の際、大ホールは300席にするなど、設備や規模からいえばダンス公演に適している。その結果、同劇場はダンス公演が盛んな劇場というふうに言われるようになった。

しかし、それはあくまでもイメージに過ぎず「それほど舞踊公演を行なっているわけではない」(同氏)。固定されたイメージによって、舞踊に興味のある客以外にホールの訴求力が低下。観客動員数の限界につながっていた。そこで、作品の種類を増やし、既存のイメージを打破。新たな観客の獲得をねらう。

一方、観客の動員数のみならず、客層の変化も近年見られる。ニュルンベルグ地方で文化全般に興味を持っている人が以前に比べて減少。さらに、特定のジャンルには欠かさず来るという熱心な観客も減った。「例えば、以前はダンス公演には必ず300人程度の常連客がいた」(バーダーさん)。

こうした変化は、客にとって選択肢が多すぎる状況になったことが大きい。ニュルンベルグ地方で劇場や文化イベントを行なう組織がここ数年増加。これを受けて、文化イベントそのものが増えすぎたためだ。

さらに客の嗜好そのものも変ってきた。例えば、区単位で音楽イベントを行なう場合、以前は区内のバンドが出演していた。しかし現在はテレビタレントを起用。それに伴い、客も「テレビに出演している」という知名度に反応するようになった。「イベントにタレントが出演すると満席になる」と同氏は眉をひそめる。

こんな傾向に対して対応策がなかったわけではない。例えば、単体の公演では観客に対する訴求力が弱いが、「公演に枠組みを作ると観客の獲得につながる」(バーダーさん)。例えば3つのダンスパフォーマンスがあるとすると、単体で公演を行なうのではなくシリーズ化。いわば、パッケージ戦略で観客に対する訴求力を高めていた。プログラムの拡充はいわば、さらにもう一歩踏み込んだイメージ戦略だ。


タッフェル ホール.
“ダンスに強いホール”というイメージが強すぎることが問題。
作品とお客さんの仲介役〜バーダーさん

「ニーズ志向」と「クオリティ維持」両立のカギ


ミヒャエル・バーダーさん。
「作品とお客さんの仲介が私の仕事」と明快だ。
タッフェル劇場が設立されたのは1987年。当時フライエステアター(任意グループ)が作品発表の場を必要としており、ニュルンベルグ市に要請したかたちで誕生した劇場だ。したがって、フライエステアター支援のためのホールという位置付けに同劇場はある。

しかしながら、肝心の任意グループも近年減少気味。各グループの内容に関しても先細りしている。例えばダンスカンパニーといえば以前は複数のダンサーが所属していた。しかし現在残っているのは1人か2人で行なっているものしかない。コレオグラファー(振付家)はいるがダンサーそのものがいないという状態だ。

舞台芸術の人材を創出するための教育やサポートを総合的に行なうシステムが同市にはなく、こういった「インフラづくりは急務だ」(バーダーさん)。いわば観客の変化のみならず、劇場コンテンツを作る潜在力も落ちてきている。

ところで、バーダーさんはもともと地元の新聞ニュルンベルガーナハリヒテン紙の記者。文化欄を担当していたという経歴を持つ。

その後、大学の劇場学部で政治や出版・編集に関する学科を学び、80年代初頭からダンスシアターを同氏は立ち上げた。そこではプロデュースやマネジメントを担当したという。その後の活躍で劇場や町から声がかかり、各文化イベントの運営を手掛けるようになり、今にいたる。

翻って、同劇場が運営に腐心している核心は、創立当初の目的と現在の文化シーンがかみあっていないところにある。そんななか、採算性の高い運営につなげるには、観客の「ニーズ」を読み取る柔軟な姿勢が問われる。一方で作品の「質」も重要事項だ。両者はしばしば反発しあう要素であり、その緊張感のなかに芸術運営の勘所があるといえよう。

ジャーナリストを経て現職につくバーダーさんは「作品とお客さんの仲人という点ではどちらの仕事も同じ」ときっぱりという。芸術に対する同氏のスタンスは明確だ。「ニーズ」と「質」をどう結びつけるかの出発点はここにある。(了)

 

 

 

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